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昼過ぎから始まったこの催しは空が薄暗くなって来た今も続けられている。
城で働く使用人達も忙しなく動いていた。その中には無論、ラルの姿もあった。
ラルを見るほぼ全ての人が、何の不信も抱かないのだ。
今迄ずっと隠されて来た真実が明るみになるまであと少し。どう運命が転がるのかは、誰にもわからなかった。


「さて、そろそろお前が話す頃だろう」
「はい」

マーヴィンの近くで年の近い貴族の友達だと思える子達と話をしていた時にふとそう言う。小さくミルは頷くとマーヴィンの前に立つ。それを確認したアレル達は目で追い続けていたラルの後ろへと立つ。


「今日は、私の為にお集まり頂きありがとうございました。」


演台に上がったミルは丁寧に深々とお辞儀をする。それに合わせて盛大な拍手が巻き起こった。


「皆さんに、話があります…。15年前、私が…"私達"が生まれた時に起きた事件の事です」
「…!」

周りの人も、マーヴィンも。一斉にざわめき出した。思い浮かぶのはただ一つ。15年前に起きた双子の事件だ。

「ごめんなさい、お父様。私は話さない訳にはいかない」

小さくも、覚悟に満ちた声で謝罪の言葉を告げる。
深呼吸をした後にはっきりと言葉を紡ぎ出した。



「私には、双子の弟が居ます。今日はこれを、皆様にお知らせしたいのです。ログファ=ラル、私の双子の弟。そして今この場所で、自ら地位を降りて使用人として働いて居ます!!」
「…っ!!」


深く、深く。
ラルの心臓が鳴った。
何を言ってるんだと思う。

アレル達がラルの背中を押そうと手を伸ばした。
だがその伸ばした手は触れる事はなく、自ら前へと進んだのだった。


「何を…、何を言ってるんだよ!」
「ラル…」
「そんな…、っ、そんな事してこれから変な事が起きたらどうするんだ、今迄ずっと隠して来たのに…」
「でも、隠して来ても、何も変わらない。絶対に変わらないじゃない!」


そう、何も変わらないのだ。
隠した所で、噂が根絶されるわけじゃない。
深々と残した傷を拭う事が出来るのは、前に進む事。


「大丈夫、もうあの事件みたいな事は絶対に起こらない、私が起こさせない。双子が"不幸な子"だなんて…、絶対に言わせない!だからお願いします、私達が双子として生きる事を、ラルの成人を、認めて下さい!!」

また深々と頭を下げた。
ミルの覚悟の言葉が響き渡る。
しん、と静まった空間があった。
その静まりを打ち消すように、次々と拍手が湧き上がる。
その音に驚きを隠せていないものの、ゆっくりと頭を上げた。

拍手をしている人達は全員、笑って居た。口々に"幸せになれよ"と言っていた。

認めて貰えないのではないかと言う不安が一気に吹っ飛ぶのと同時に、嬉しさから涙が溢れ出てくる。



「ありがとう…、ありがとう、ございます…っ!」


消えない傷跡を拭い、修復出来るのかは、これからにかかっていた。
だが今は幸せを感じて欲しいと、誰もが思うのだった。


「手を出すまでも無かったな…」
「そうだね、あの姫様も、頑張ったと思うよ」


アレルとクレスも笑みを浮かべながら、拍手を送った。


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