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城の中にある一番広いホール。
そこは人で溢れかえっていた。豪勢なドレス、豪勢な燕尾服。煌びやかな格好の人が沢山居る。
その中でバタバタと忙しなく動くのは騎士団員だけかもしれない。
一般市民も招待されている為、もしもの事が起きないよう警備に当たっていた。
そんな彼らも何時もの格好ではなく、言わば正装で参加していた。普段の格好が白黒を基調とするのなら、正装は紺を基調としたデザインだった。
溢れかえる人ごみから少し外れた所に真琴とリノは立っていた。
「流石、王家は凄いわねー…、人数が尋常じゃないわ」
「うん…、それだけ重要な事なんだよね」
グラスに注がれたシャンメリーを口にする。
自分は決して体験する事は無いだろうと思っていた為に、どうも実感が湧かなかった。
「でも、めっちゃ可愛いドレスだよね!真琴も綺麗!」
くるり、と一回転する。
ショートワンピースタイプのドレスがふわりと空気を含んで膨らむ。リノらしい、白と黄色を基調とした爽やかな色合いのドレスだ。一方真琴はマーメイドラインのドレスで、すらりと身長が高く見える。そう派手なデザインでは無いが、白を基調としたデザインの為清楚な雰囲気を醸し出していた。
「真琴!リノ!」
不意に名前を呼ばれて振り返る。
此方に向かって駆け寄って来るアレルとクレスの姿があった。
今迄の格好に見慣れた所為で、どうも正装は見慣れない。まじまじと見つめてしまうと、その視線に気付いたアレルが首を傾げる。
「どうかした?」
「あ、えっと…、見慣れないなぁって…」
「あぁ…、滅多に着ないからね、正装なんて。こんな行事の時ぐらいだよ」
「私もドレスなんて初めて着たから…なんか…」
「大丈夫、似合ってるよ」
微笑みながらアレルはそう言う 。言われた事が無い単語に真琴は何だかむず痒く感じた。
間も無くして、ホールの照明が薄くなる。
「始まるね」
辺りは静かになる。中央の少し高い台の上に現王マーヴィンが姿を見せた。
「今日は我が娘、ミルの為にお越し頂き感謝する。宴は始まったばかりだ、存分に楽しんで欲しい」
マーヴィンの言葉で、宴と呼ばれたパーティーは幕を上げた。
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