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一旦城を出て、リードルフの1番人の多い場所へ向かう。
商店街のように沢山の店も立ち並ぶが、割りと豪勢な作りの家も多い。やはりそれなりに資産持ちの人が多く住む街のようだ。
その中でも一際目を引く可愛らしい外装の店があった。
ウィンドウディスプレイには普段着ないようなお洒落着が飾ってある。ここが、今回ドレスを作ってくれる場所らしい。


「すっごい、可愛い…!」
「見た目はな」
「…、ほんとに入らなくちゃだめなのかな」

リノと真琴はウィンドウディスプレイを眺め、感動の言葉を漏らすも、その隣に立つアレルもクレスも、表情は浮かない。可愛らしい店に入ることに抵抗があるようにも思えた。
女性が好みそうな外装の所に入って行くのは、少々難しいと言う事なのだろうか。
色々と真琴が考えているうちに二人は言葉を紡ぐ。


「いいか、絶対に引くなよ」
「あと…、自分の身は守った方が…良いと思う…」
「う、うん…?」


溜息を最後に零すと、ゆっくりと扉を開けた。扉が僅かに軋む音がすると、開けた拍子に扉に取り付けられた鈴が鳴るようで静かな部屋に響き渡る。店の中は若干薄暗い。


「まだ、営業してないんじゃないの?」
「そんな事はないと…、さっき連絡したときはもうやってるみたいだったし…」


とりあえず中に入る。奥に向かって声を掛けても応答は無かった。
一歩、二歩ほど後ろにいる真琴とリノの肩を静かに叩く者が居た。
驚いて声が出そうになるもぐっとその口を押さえられる。口元で指を立て、静かにするようにその人物は促すと二人は大人しく、静かに頷く。 幸い、まだ前の二人は気付いて居ない。

その人物は明るい空色の髪をした、綺麗な人だった。


「エルネット!居ないのか?」


クレスは奥に向かって名前を呼ぶ。
恐らく、今彼らの後ろに居る人の名前。


「エルネ…」


次いでアレルもその名前を呼びかける。まだ全部を言い終えない時に、二人の大腿から腰に掛けてをゆっくりと手が這う。


「もー、相変わらず細いわねーっ」
『!!?!?』


二人が振り返った時には既に遅く、二人にエルネットと思われる人物は二人に飛びかかっていた。避けるに避けられずその人を受け止めると勢いによってバランスを崩してそのまま後ろに倒れる。

「ほんっっと久しぶりねぇ〜もう、君らあたしに絶対会いにきてくれないんだもの!寂しかったんだからーっ!」
「ちょ、っ、別に用事でも無きゃ…」
「あたしに会うって用事を作ってくれればいいじゃない!」
「っ、離せ!離せっつーの!!」


目の前でもがく姿を真琴とリノは見ているしかできない。寧ろ呆然としているしか出来なかった。
何が起きてるのかも正直理解出来ていないのもあるが、それより何よりこの綺麗な人が何なのかが気になっていた。


「アレル…」
「!?!?」
「ほんと腰細い…、女の子みたいじゃない。こんなんで訓練ついていけるの…?」
「っ、ちょ、いい加減に…!」


標的がアレルに向いた隙を見て、クレスはどうにかそこから脱出する。
倒れた時に腰を強打したらしく、腰を摩っていた。一方アレルはと言うと逃げ様がない状態に加え、嫌らしいとも言える手つきにぞわりと鳥肌を立たせる。


「はぁ…、助かった…」
「大丈夫…、なわけないよね…」
「こうなるって分かってたからな…、今日の標的がアレルで良かった。アレルには悪いけど」

リノが苦笑しながら言うと、もう既に疲れ切った様子でクレスは答えた。
再び視線を戻す。もがいているのは分かるが、時折聞こえるリップ音から大体見えずとも何をされてるのかぐらい予想は出来た。


「綺麗な…、人、だね…」


真琴がぼそりと呟くと、クレスは腕を組んで溜息交じりに言う。



「歴とした男だけどな」


3秒程間が空いて、目を点にして真琴とリノは呟く。



『‥……え?』




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