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「とりあえず説明して欲しいんだけど」


リノが若干不満気に呟く。
唐突に始まった会話のおかけで状況が全く理解出来ていない真琴達は何があったのかの説明を求めた。
すると確かに説明しないのもおかしいと思ったらしく、とりあえずソファに座り、ティーカップに注がれた紅茶を一口口にしたあとクレスは言葉を紡ぐ。


「えっと…、話せば長くなりそうだから要点だけ言うぞ。まず、王様の娘が今年15歳になる。それも一週間後に。」


15歳。その歳は王家一族にとって、または上位貴族達にとっては重要な年齢であるのだと言う。15歳になる日の晩に近しい友人や身内、または近くに住む住民たちを誕生パーティーに招待し、社交場デビューを果たさねばならないと言う伝統があった。デビューを果たしていないのに大きな公の場に出る事ははしたなく、暗黙の了解として快く受け入れてはくれない。言わばマナー違反となる。そのパーティーが一週間後に開かれるのだとクレスは言った。

「…....で、警備っつーか、正装で貴族に化けて警備して欲しいって命令が来たってワケ」
「それとドレスが必要ってのが、何の関係があるのよ」
「王様がお前らにも参加して欲しいんだと。歳も同じぐらいだからってさ」
「ふーん…」


参加する必要性があるかないかで言われたらないだろう。だが王様がそれを望むのなら、それがこれからに生かせるのなら。やるべきなのだろうと真琴は思う。
そんな事を考えている真琴の隣でリノは僅かに肩を揺らし、ソワソワしているように見えた。


「すごい!まさかそんな場所に招待されるなんて!絶対参加出来るような事じゃないから楽しみっ!」
「浮かれてんなよ、リノ。王家公式の夜会だ、それなりに名の知れてる奴らが来るはずだ。変に浮かれてると痛い目みるからな」
「大丈夫大丈夫! あたしがそんなヘマしない!」
「……、で、最初に戻る。ドレスを作りに行かなきゃなんねぇんだよ、お前らの」


僅かな時間だが呆れ気味に無言になると、小さくため息を零してそう告げる。
どうやらパーティー云々よりも、"ドレスを作りに行く事"が嫌なように見受けられた。


「騎士団と王家が使ってる御用達の店がある。そこで作って貰う事になって、今アレルが連絡しにいってる。…、って言っても帰って来るの遅いな」


アレルはクレスが部屋に帰って来てから間も無くして部屋の外に出て行った。連絡をしているだけなら、随分と時間が経っているような気がする。


「私、見てくる」


真琴は立ち上がったと思うと、それだけを口にして部屋を後にした。声を掛ける暇もなく。


「…、真琴、早。」
「思い立ったらすぐ行動するタイプなのかもな」





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