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「リノ!」
「ん?」

真琴の腕を引き街へと連れ出したリノを真琴は呼び小走りだった足を止めた。
さっきのヴァレンスに対しての対応が少しながらも気になったらしく、ちらりと来た道を振り返る。


「あの人…ヴァレンス、さんに…あんな事して大丈夫なの…?」
「あぁ、大丈夫!あの人、多分あたしが苦手がってるって分かってると思うし。まぁ…行く所ってのも嘘だけど」

平気平気と笑ってみせる。
彼女自身がそう捉えているのなら、真琴がこれ以上心配をする必要もないのだが、何とも言い難い表情だった。



(あの人…何か…)



言葉に出来ない"何か"が真琴の胸の中に渦を巻く。
言葉に出来ない以上リノに話す事も出来ない為ただ黙り込んでしまった。
僅かな沈黙が二人の間を包む。


「真琴?」
「あ、えっと…」


ごめん、と真琴告げる。
リノは真琴の考えていた事に関して特に何も聞く事はなく、再び真琴の手を握った。


「よし!じゃあまた下町行こうか!この辺は金持ちばっかりの街だから物価高いし…あたし、美味しいアイス食べれる場所知ってるよ!」
「アイス…」

僅かに真琴の目が輝く。その瞬間を逃がさなかったらしく、リノは嬉しそうに笑う。
僅かながらも二人の距離が縮まったように感じる。


「よし!じゃあ食べに行こうか!」
「食べに行こうか!…じゃねえよ」

不意に聞こえた声にリノは小さく肩を揺らす。
後ろにはアレルとクレスの姿。
半ば呆れ顔のクレスはリノの額にデコピンを下すと小さく呻き声を上げた。デコピンを下された所を両手で摩りながら頬を膨らませる。


「ったく…、あからさまに居なくなるなよ」
「だって筆頭様苦手なんだもん」
「だからってあそこまであからさまに部屋出て行けばヴァレンスも気付くぞ?まぁ…気付いてると思うけど」

薄々リノの態度の原因に、ヴァレンスも気付いてなくはいないだろう。
クレスの言う通り、リノの態度はあからさまな事が多くよっぽど鈍感でない限り気付く。
リノはそんな事御構い無しのようで、クレスの話もちゃんと耳に入っているのかも不安だ。


「…って、2人はどっかいくの?」

ふと、リノは2人の服装に目を向けた。
服装は普段と一緒だが、普段ネクタイを着けないクレスがネクタイを着けて居る。これがある時は誰かに会いに行く事が多いのだ。
大体の場合自分達より身分の高い人達の確立が高い。


「王様。王都の王様の所に行くんだよ。ヴァレンスの命令でね」
「だから、ちゃんとした格好していくしかねぇだろ」

王様の住む場所は騎士団の城の直ぐ隣にある。
比較的親密な関係であるこの二つの団体な為然程身形は気にされないだろうが、少なからずけじめをつけたいのだろう。
そんな感じが受け止められた。


「あたしも行きたい!滅多に行けないじゃない、そんな所!」
「だめだ、お前が行っても意味ねぇし」
「連れてけ!馬鹿!」


リノとクレスは言い争いを始める。
仲は悪くない。
よくある光景らしく、アレルは止める気配もなくただその光景を見ていた。
逆に見慣れてない真琴はどうにか止めようと慌てた様子を僅かに見せた。
ふと脳裏に思いついた一言を咄嗟に呟く。



「私も…、私も行きたい…」
「ほら!真琴も行きたいって言ってるし!」


思い掛けない一言に呆然としたクレスだが、そこまで言うならと渋々ながらも了承し、4人で王様の元へと向かうのであった。



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