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それから少しして、真琴とリノをアレルとクレスは迎えに来た。
二人は昨日同様にロングコートのような制服を着て、腰にはサーベルを挿している。

長い廊下を歩き、最上階へと向かう。
階段を上がり切って一番最初に見える大きな扉。そこに"筆頭"と呼ばれる人物、そして真琴に会いたいと言った人物が居るらしい。

クレスは扉をノックし、中に確認を取る。

「筆頭、真琴を…岬真琴を連れて来ました」
「入りなさい」

扉の先から優しそうな声がする。
ゆっくりと扉を開けると真っ先に視界に入ってきたのは大きな出窓だった。
差し込む太陽の光が眩しい。
中に入ると真琴達が寝ていた部屋の2倍以上はあるであろう広さ。
対話をする時に使うのであろう机とソファーを中心に、本棚とベッド。そして仕事用の机と回転椅子があった。

くるり、と回転椅子が回ると先ほどの声の主が姿を見せる。


「初めまして、岬真琴さん。私の名はヴァレンス。この騎士団の総責任者、筆頭騎士を名乗らせて頂いています」


長い銀髪は一本に束ねられ、動く度に太陽の光を浴びて輝く。楕円形の眼鏡を指で押し上げ、アレル達同様にロングコートのような制服を着用していた。真琴の想像していたような人物…年端の行った男性では無く、アレルとクレス、または他の騎士団員とも然程変わらないであろう外見だった。パッと見て20代後半ぐらいだろう。
温厚な笑みが真琴に向けられる。


「アレルとクレスから聞いたけど、此方の世界の人では無いんだってね。…、大変かと思うけれど、使っていた部屋は自由に使って頂いて構いません。困ったことがあれば、私にでも、彼ら、リノにでも言って下さいね?」
「は、はい…ありがとう、ございます…?」


余り顔を近付けられるのが慣れて居ない為、若干呆然としながら小さく頷く。語尾が僅かに疑問系だった事に小さく笑って見せれば顔を離し、仕事用の机へと戻る。


「私はまだ仕事が残っていますので、…申し訳ない。良ければソファーに腰を掛けていて下さい」
「すいません、筆頭様。あたし達、ちょっと行く所があるので」

ヴァレンスの言葉を遮るように強気に出たリノはそう告げると頭を下げて真琴を引っ張って行く。それにつられて真琴もお辞儀をし、部屋を出て行った。

「何だ?」
「さぁ…、大体は想像がつくけど」


扉の方に視線を向けながらぽつりと呟く。アレルの考えている事はぼんやりとだがクレスも分かっていた。


「アレル、クレス」
『…、はい』
「君達に頼みたい事があるんだ」

机の上に読んでいた書類を起き、ヴァレンスは腕を組む。



「王都の王の命令を受けて来て欲しい」






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