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翌日。
この日も昨日同様に気持ちの良い快晴だった。
まだ若干眠たいような気がするも、真琴は目を擦り、服に着替える。
扉の先の廊下からは忙しなく人が通る音がしていた。騎士団の団員なのだろう。わずかに聞こえてくる声は大体が男性の声だ。
扉に向けていた視線を自分が寝ていたベッドの隣に向ける。
リノは気持ち良さそうに眠っていた。



(起こさない方が、良いのかな…)


真琴もここまで気持ち良さそうに眠っている姿を見てしまえば、起こすのが申し訳なくなってしまう。掛ける言葉が見当たらないのも確かだが、きっと昨日の今日だから疲れたのだろうと、他人事のように思う。
自分も巻き込まれている事には変わりないのだが。

部屋の窓際にある椅子に腰を掛けてぼんやりと外を見つめる。

眠れば覚める、そう思っていた。
だが目が覚めても変わらない世界。
これが現実だ。

真琴は小さくため息を漏らした。ここから先の不安が胸に募る。
"アリス"の事を含めて、自分はこの世界でも違うのだ。誰とも同じくになれない計り知れない虚無感。それを感じる度に襲う喪失感。これを幾度となく繰り返してきた真琴はもう慣れてしまったかもしれない。

それよりも気になったのは昨日リノが言いかけた言葉だった。


『"アリス"の…』


(何なんだろう…)


考え出して間も無く、ノック音が聞こえる。
それに返事をして、若干小走りで扉に向かい鍵を開けるとそこにはアレルの姿があった。


「おはよう。 よく眠れた?」
「あ…うん…、まぁ…」
「リノは……まだ寝てるか」


部屋を軽く覗くも起きてる様子が見受けられない為、そう苦笑しながら呟く。


「じゃあ良いか…朝食だけど、まだリノが寝てるみたいだし、部屋に持ってきて貰うね。その方が君もいいでしょ?」
「うん、えっと…ありがとう…、アレル、さん」
「…!アレルで良いよ」

アレルは笑いながらそう告げる。
"さん付け"は慣れてないんだと付け足すように言うと、真琴達の部屋から離れて行こうとした。2、3歩歩いた辺りで何かを思い出したらしく、再び扉を閉め掛けていた真琴の名前を呼ぶ。

「そうだ、筆頭が…君に会いたいそうだよ。1時間後に迎えにくるからそれまでに色々済ませておいて。リノも一緒に連れて行くから起こしておいて欲しい」
「筆頭?」
「僕たちのトップって言えば良いかな?総責任者」
「総責任者…。わかった」
「そんな重く捉えないで大丈夫。じゃあ、また後で」

優しく笑い、アレルは部屋を後にした。
それから間も無く朝食が部屋に運ばれ、中々起きないリノをどうにか起こし、言われた時間までに準備を終わらせる。


「筆頭様が真琴に会いたい、ねぇ…何を考えてるんだか」


着替えながらリノがぼそりと呟く。
真琴は聞こえてはいるが特に応答は無く、頭にはてなを浮かべていた。


「あの人、何考えてるかイマイチ分からなくて。まぁ、実力はあるんだけどさ…あたしはちょっと苦手なタイプかも」


どんな人物なのかイメージが出来ない所為だろう。ピンと来なかった。
ただ真琴は何も言わずにマグカップに注がれた冷めた紅茶を口に運んだ。



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