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騎士団の寮へ付き、真琴とリノは空き部屋へと案内されていく。アレルとクレスの二人が話をつけてきたらしく、暫くの間は空き部屋で生活をする事となった。
寮と言っても真琴が想像するような建物ではなく、御伽噺に出てくるような城のような見た目をしていた。内装もそれ相応に整っており、各部屋には最低限必要な物はある程度揃っている。
窓の近くに行けば、王都の街を一望出来る。


「じゃあ、僕達は自分の部屋に戻るから」
「何かあれば呼べよ。この部屋の上の階だから」
「ありがと!あたしも真琴も疲れたし、ゆっくり休むね!」
「…」

クレスは何か言いたげな表情をするが、何も言わずに二人は部屋から出て行く。真琴はベッドに座り、若干放心状態だった。仕方が無いと言えば仕方が無い事であろう。突然見知らぬ世界に来たと思えば、リノと出会い、事件に巻き込まれ、そしてアレルとクレスに出会った。立て続けに起きる事態を直ぐに理解するのは難しい話だと思う。


一方リノはそんな真琴を見つめながら、脳裏には先ほどのクレスの言葉が浮かぶ。


『候補者の最終的な運命は変わらない』


それは彼女自身、痛いほど分かっていた。
運命が何なのかは後々に言わなくても分かる事だけれど、何も知らない真琴には知っていて貰わなければいけない事だった。


"アリス"の候補者は本来ならアメディウスの人の中からある日を境に突然現れるのが今までの決まりとされていた。
候補者の体の一部には同じ蝶の痣が刻まれる。それは目印であり、使命を果たすための証でもあった。候補者は選ばれた時必然として、己の使命と使命を果たせなかった者の末路、そして使命の残酷さを知る事になる。

だが、それはあくまでもアメディウスの人の話だった。

真琴はアメディウスの人ではない。
"選者"が直々に真琴を選び、候補者としてアメディウスに送られた。アメディウスの人ではない彼女に過去の決まりは通用しない。

運命を知っている者が、知らない者に告げるのはどれだけ酷だろうか。
知っている者同士なら告げる必要もない。

重い口を開かなければならない。



「あ、あのさ…真琴…」
「何?」
「さっき、言いそびれた事があって…」
「…"アリス"の話?」

何気なく真琴は言った。その言葉にひやりとする。正にその通りだ。



「うん、あの…。"アリス"の候補者で"アリス"まで…」




言えなかった。
自分は受け止めている運命を、彼女が…真琴が受け止める事が出来るのだろうか。
ただでさえ信じ難い事に巻き込まれているのに、更に真実を告げるのも辛いだろう。


「ごめん、何でもない!あたしお腹空いちゃったなー。ご飯食べに行こう!」
「えっ、でも…」
「良いから良いから!ここ、ご飯は自由だからね!行くよ!」


リノは笑顔で言葉を隠し、
真琴の腕を引き、部屋を出て行く。


帰寮後に勝手に抜け出した事がばれてしまい、リノはクレスにこっぴどく叱られたのは言うまでもない。



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