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その後、事態は漸く収まり、店の中にいた盗賊達は騎士団院に連行され姿を消した。
気を失っていたマリアも意識を取り戻し、特に怪我も無かった事から荒らされた店を綺麗に戻す為に掃除を始めた。真琴とリノもそれを手伝い、アレルとクレスも手伝う事になった。


ある程度もとに戻る頃には陽が傾き始めて居る頃だった。



「ふぅ、漸く終わったね!」
「漸く終わったね!じゃねぇよ、馬鹿野郎」
「痛い!!!」


クレスがリノの頭に拳骨を下す。
ごつん、と鈍い音がすると頭を抑え、涙を浮かべながらリノはそう叫んだ。
真琴から見て仲が良さそうに見える。
そんな二人を見ている真琴の隣にアレルが立つ。

「大丈夫だった?怖かったんじゃない?」
「いえ…大丈夫、です」
「…、ところで君はこの辺りの子じゃないよね?」


何処か強がっているように見えたものの、そうじゃない何かが真琴にはあるように見えた。アレルは返す言葉が無く少しの間沈黙を見せるとそう問いかける。


何と説明すれば良いのだろうか。


真琴も言葉が詰まる。
その会話を聞いていたリノが二人の間に入り、それに次いでクレスも加わる。


「真琴はあたしの友達よ!アメディウスじゃない、遠い世界から来た子」
「アメディウスじゃない、遠い世界?」
「んな場所、何処に」
「そして」


一息おいて、どこか辛そうに告げる。




「"アリス"の候補者」


"アリス"の候補者。
その言葉を聞いた途端、二人の表情が一瞬凍りつく。真琴はその表情を見て、頭には疑問符が浮かんでいた。
直ぐに凍りついた表情は和らぎ、真琴との距離を縮める。
アレルはネクタイを少し緩めてシャツの首元の左側を開く。
クレスもネクタイはしていないものの、アレル同様に右側のシャツの首元を開いた。
それぞれ開いた方の首筋に小さく蝶の痣が付いている。


「僕は、アレル。アルド=アレル。君と同じ"アリス"の候補者だよ。
騎士団に所属する"聖騎士"の一人。よろしくね。」
「俺はクレス=ヴィルザルナ。"アリス"の候補者で"聖騎士"の一人。」
「"聖騎士"…」
「騎士団の階級の一つで、最高位に当たる地位よ。同時期に2人居るのは珍しいんだって」


リノが言葉を足すように説明する。
真琴は小さく頷くとリノが真琴の耳元で囁く。一応名乗って、と言うのだ。

「えっと、岬真琴…です」
「真琴。宜しくね」

アレルは優しく微笑む。向けられる笑顔に慣れずにいるようで言葉を籠らせる。特にそれに対して何かを言うわけでも無く、別の話をし始めた。

「もう時間も遅いし、一旦帰った方が良いね。真琴は何処に泊まるの?」
「特に、決まっては…」
「あたしの家!あたしの家においでよ!」
「お前の家だと不安だな。騎士団の空き部屋でも使えば良いと思うけど」
「じゃああたしも一緒に泊まるわ!真琴を一人にしたくない!」


リノが言って聞かない為、真琴とリノはアレルとクレスに着いて騎士団の寮へ向かう事になった。
下町の道を騎士団の寮へ向かって歩いて行く。

不意に、リノの隣に立ったクレスが小声で呟く。


「あいつに、真琴に"アリス"の候補者の事、どこまで話したんだよ」
「…、宿命以外は、話したよ」
「ちゃんと近い内に話した方が良い。候補者の最終的な運命は変わらない」
「…、分かってるよ」



リノは辛そうな声で呟くと、クレスの側から離れて真琴の隣へと向かった。




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