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リノの話を纏めると、
今この世界は「アメディウス」と呼ばれる魔法を主流とする街であるという事。
その世界の中でも最も地位の高い身分、真琴の世界で言えば天皇にあたる身分が「アリス」と呼ばれている事。
この「アリス」は100年に一度アメディウスに住む人物と交代するという事。
そして「アリス」になる事が出来る候補者になれるのは、蝶が選びし7人の内の一人だという事。

簡単ではあったが真琴は大体の事は理解出来ていたようだ。
リノの説明には肝心な部分が抜けているようだが、彼女はわざと口にはしていないようだった。

「私は、アリスの候補者なのね…?」
「そう言う事になるね!あたしもだけどさ」

アリスの候補者だと言う事は理解出来たものの、ただ一つ腑に落ちない所があった。

"アメディウスに住む人物と交代する"。
それは真琴は含まれない。
真琴は、全く別の世界から来たからだ。
あの"選者"が何故それを隠していたのか知る由もないが、"選者"が今ここに居ない以上、自分が選ばれる理由を知る由もない。

真琴も、リノにここまでの経緯を話す事にしたらしく、途切れ途切れではあるが口を開く。
ここまで優しくしてくれた人物は真琴にとっては初めてだった為若干戸惑いを感じていたが、自分がきちんと話さない訳にはいかないと思ったのだろう。

「"選者"の手を取って蝶を宿したって事か…うーん、何だろうなぁ…今までの歴史上、そんなの無いし」
「…。」
「あ、疑ってる訳じゃないよ!ただ、"選者"って名乗った奴の考えがわかんない」


それは真琴にも分からない事だ。

「ま、同じ候補者なんだし、あたしが貴女に出来る事はやってあげる!」
「…。」


こんな時に何を言えば良いのか分からない。
お礼を言うような経験も真琴はほぼ皆無に近い。
リノはそんな真琴に慣れたのか、立ち上がって真琴に顔を近付ける。
優しい声で囁いた。


「こう言う時は、"ありがとう"って、言えば良いのよ」
「…ありがとう」

にこりと笑みを浮かべる。
空になったマグカップを二つ、カウンターまで運ぶと再び真琴の手を握る。



「貴女がこの世界の住民じゃないなら、護身用の物と…あとその服を変えなくちゃね!」
「えっ、ちょ…」

有無を言わさずに駆け出した。


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