connect


ふわふわした意識の中思い浮かぶのは懐かしい光景。

『私』がずっと好きだったもの。
心地よくてあったかい気持ちになれるもの。
隣に居られるだけで嬉しかった。
優しい手が頭を撫でてくれて、不器用に笑った顔。
その姿が愛おしくて、大好きだった。
ずっと一緒に居たいと思っていた。


ーーーーどうしてそれを懐かしいと思うのか、好きだと思うのか、いろんな思いを抱いているのか『あたし』は分からない。
思い浮かぶその光景が昔のことだと言うのは分かるのにどうしてもそれを『あたし』が経験した感覚がない。現実味がない、って言えば正しいような気がする。視点は全部『自分』なのにね。
だけどとても『大事なこと』を忘れてしまっていると言う事だけ何故か分かった。
何で『大事なこと』だって分かったんだろう。

『あたし』は少しだけ、頭を抱えた。
もう少しで思い出せそうなんだ。
全部、何もかも、無くした『私』を。

もどかしくて頭が痛い。

だけどその反面、これ以上その懐かしさについて触れない方がいいよって誰かが言ってる。『私』が好きだったものが言ってるんだ。だから触れない方がいいのかな。不思議な感覚もみんなみんな、全部奥底に仕舞おう。仕舞っちゃえば痛いって思わなくて済むでしょう。


「思い出してもいい事なんてない」って。
「全部忘れて幸せに生きろ」って。
『その人』が言ってるんだ。


だから『あたし』で居るんだもん。
だって『私』になったら、『その人』は悲しむでしょう。



[ 186/195 ]

[*prev] [next#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -