prologue



リノがどこかに向かって走り出す姿を見た。
叩かれた手はもう痛くはないけれど薄らと赤みを帯びている。
追いかけるべきか、否か。
あの様子からして何かがあったのは確かだが、リノが何を思い、何を考えているのかは分からない。

それに加えて昨日"彼"に言われたことに関しても頭を抱えていた。
嫌なことを言われたわけじゃない。
結果としては喜んでいいこと。なのに素直に嬉しいと言う感情よりは戸惑いの方が大きいかもしれない。
"彼"の言う感情が自分自身には酷く欠落しているような気がした。


部屋からもう一度外に視線を向ける。
晴れていた空が次第に怪しい雲行きに変わっていく。
黒っぽい雲が空の大半を占め始めた。



「………雨、降りそうだなぁ」



ぽつり、と呟いた。
自分の悩みも雨に流れてしまえばいいのにと思った。
色々思う事が多いのにさらにその雲行きが妙な胸騒ぎを起こさせた。









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