prologue




記憶にあるずっと昔に、最後に会った時と何も変わっていない。声も、見た目も。40代後半前後と思われる男ーーーアレルが「父さん」と呼んだ人物は、確かにアレルに似た面立ちであった。


「”父さん”なんて呼んだら、”父さん”に失礼かな…」
「どうとでも言うが良い、私は今まで通りに器を変えているだけだ、お前こそ昔から何も変わらぬ…」


見た目に反した古風な口ぶりが、”父さん”の姿をした別の誰かであることを突きつける。喉を鳴らして笑う姿に嫌気がさし、アレルは”父さん”を睨んだ。



「昔から、変わらぬその眼…”ヘルム”が私に身体を受け渡した日から変わらぬ眼をしている…いかにも私を、”魔導師”自体を嫌っている眼だ…」
「あんたが…あんたが”父さん”の身体に移し替えたから!それに意味もなく村を殲滅させた!それを…許せるわけないだろ…!」


サーベルを力の限り握り締めた。
そんな様子を見てまた”父さん”は笑う。


「”アルド=ヘルム”は私の器であった名前だ…今の私の名はそのような名ではない」
「器を移し替えて現在を生きる、初代から変わらない”魔導師”党首”エミハルト”…」
「そしてお前は…」

”父さん”。
”父さん”の姿をした中身は違う人物。
その中身の名前は”エミハルト”。

エミハルトはアレルを指差して言った。


「ーーーヘルムが残した唯一の息子で、唯一の”魔導師”血族、”アルド=アレル”だ」








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