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アメディウス、北部最大の森「コーブルグ」。
北部最大と言うよりもアメディウスの中では一番大きく広い森である。人里から離れた場所に存在するため、狩りに出ない限りはそこに向かう人はそうそう居ない。道もほぼ整備されていないに等しく、同じく狩人や動物が通るうちに自然に出来た小道がある程度だ。
そんなコーブルグの中をアレルは歩いていた。乗ってきた馬は森に返す前に手放した。背丈のある木々に隠れるように、コンクリートで出来た廃倉庫のような建物が聳え立つ。
漸く探し出した”脅威”そのものが居る場所。
「ーーー漸く、見つけた…」
アレルは扉の前に立ち、小さく深呼吸をした。サーベルに手を掛け鞘から抜き出すと、重たい錆びた扉を開けた。軋むような音が建物の中に響き渡る。
辺りは暗いが、人の存在ぐらいは見える。とは言っても中に人は見当たらない。警戒しながら前に進んで行くと、一際目立つ両開きの扉があった。
アレルはそれを躊躇わずに開ける。
殺風景な雰囲気と錆びた鉄のような匂いがした。左右両方の壁に着いた窓と、アレルが開けた扉を囲うように着いているギャラリー。
その殺風景な空間に似合って居ない、深紅の一人がけのソファー。
アレルの革靴の音が何重にも響き渡って聞こえる。
その一人がけのソファーには男が座っていた。
綺麗な金色の髪に、アイスブルーの瞳。
そして左の額から頬、首にかけて刻まれた印。
その男は口元に弧を描きながらアレルを見つめていた。
「ーーーー久しぶり、だなぁ…」
「そうだね、出来る事なら…二度と会いたくなかったよ…」
アレルは伏せていた目を真正面に向けた。
「ーーー”父さん”」
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