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「待って!ちょっと!」


前を走るラスをリノは必死に追いかけるも歩幅の所為なのか、中々距離は縮まらない。全速力で手の届く範囲まで近付くとロングケープを後ろに引っ張った。
どこかで見たような光景だが、少しだけ後ろによろめきながら止まる。


「…..、なんだよ」
「なんだよ、じゃなくて!今からいっぱい危ない人が来るから…、ラスもどこかに避難…」
「そんなの分かってる。だから向かってるんだろ」


”どこに”と聞きかけた瞬間に悟った。明らかに部外者だというのに、自ら対立の場所に向かおうとしているんだと。呆然とラスを見つめたまま黙り込むと、リノは静かに首を振った。


「だめだよ!あたしみたいなのは、街の人達を守らなきゃいけないけど、ラスは関係ないでしょ? 今すぐ逃げて!」
「だったら尚更だな」


後ろに引っ張るリノの手を振りほどくと走り出した。リノも諦めずにラスを追いかける。走っていく方向とは逆方向に街人は逃げていた。悲鳴が空に向かって広がる。あまりにも数が多すぎて聞き取れはしなかった。我先にと走る街人にぶつかりそうになるもどうにか避けてラスを追った。

追った先に見えたのは、明らかに異質な見た目の人物が多数。一部は騎士団の団員と刃を交えていた。交えて居ない異質な見た目の人物達ーー反逆者達はそれぞれ武器を手に前に進む。


「王族も貴族も!存在するべきじゃない!」
「殺せ!みんな殺せ!!!!」


みんながみんな、同じような事を声を揃えて言った。リノは僅かにその声に怯む。怖いと感じた。だが自分がやらねば、後ろに逃げて行った街人が危ない。ぐっと手を握り締めると覚悟を決めたように前を見据えた。


「小洒落た格好しやがって…、俺達に出来ない事を当たり前のようにするんだな!」


怒りがこもっていた。中には女の人もいる。3人が同時にリノに攻撃を仕掛けた。リノは前に結界を張ろうと構えた瞬間、金属音が鳴り響いた。ふわり、と黒い布が視界の中で舞い上がり黒髪がその衝撃で揺れた。結んだピンク色のリボンがはっきりと分かる。


「ラス…!」



ラスは握っていたサーベルで鉄パイプを振り払うと腹に蹴りを入れる。呻き声を聞いて助けに入ろうとした他の奴らも容赦無く切り捨てた。まだ使っていない”リング”のオーブを割砕き宙に欠片が散らばった。

そんなラスの後ろ姿がリノの頭の中で誰かと重なる。

見惚れているように呆然と見つめていた。


「ぼーっとしてんなよ」


ラスの声にはっと我に返る。
気付いた時にラスは既に新たに刃を交えていて、リノもそれをサポートするように自身の力を使った。





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