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真琴の言葉に涙したその後、ミルはけじめをつけてくると告げ部屋を出て行った。
間も無くしてラスも静かに立ち上がり、扉の方へと足を運ぶ。立ち上がり追いはしないものの、真琴はラスの名前を呼ぶ。
「ラス…、あの、ほんと…ありがとう」
「……」
足を止めると視線を真琴に向ける。何か言いたげに口を開けば、低い声で言葉を紡ぐ。
「…俺はお前の為にとか、こいつらの為にやったわけじゃない。俺の探す”答え”を見つける手掛かりになると思ったからやっただけだ」
再び顔を背ける。背けると同時に髪が揺れ、片目の半分程を隠していた前髪がふわりと揺れた。その拍子に左目の下にはっきりと刻まれた蝶の印が目に止まった。
「……!」
「ーーーそれに、お前の言う”誰も傷付かないアリスの決め方”があるなんて、信じない」
はっきりと、そう告げた。返答を待つような間も無くラスは足早に部屋を出て行った。ラスを追いかけるかのように、アレルとクレスも”仕事があるから”と告げて部屋を後にする。残された真琴とリノの間には沈黙が暫く続いた。
「大丈夫、ラスが信じていなくても、あたしは信じてるよ」
「ーーうん、ありがとう」
僅かに震える真琴の手を握り、リノは優しく笑いかける。真琴も小さく笑って、リノの手を握り返した。
一方ラスはと言うと、追いかけてきたのか”仕事”の場所がそっち側だったのか、アレルとクレスはラスの後ろに着いていた。
「なんだよ」
我慢ならなかったのか、振り向きはしないものの後ろに向かって聞いた。ぴたりとお互いに足を止める。
「…言わない、つもりなの?」
「……何を」
「全部、だよ。俺達は知っていてもあいつらは知らない。隠し通すつもりか?」
”全部”。
アレル、クレスは知っている事。
隠している事を伝えるつもりもラスにはないらしい。返事がないという事がそれを物語っていた。
「ーーー必要ない。何も言わない、伝えない。”あいつ”には特に」
声色は冷たい。
はっきりと見向きもせずにそれを告げると再び歩き出し、姿を消した。
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