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閉じた瞳の先が眩しく感じた。
重たい瞼をゆっくりと開く。ぼんやりとした世界は次第に鮮明になっていく。真っ先に視界に入ってきたのは、壁についた縦長の窓。そこから太陽の光と、鮮やかな水色が姿を見せていた。


「ここは…」



どこだか分からない。とりあえずと思い、アレルは体を起き上がらせようと力を込めた。が、一行に体は動かない。指先は動くものの体全体は殆ど動かないに等しかった。
心なしか意識すらも定まっていないように思える。
自分は半ばうつ伏せのような状態で倒れていた。顔だけをどうにか動かし、周りを見まわすと、自分と向き合うように同じような体勢でクレスも倒れていた。彼はもう既に目が覚めていたようで、アレルの目が覚めた事に気付くと視線を向けた。


「目、覚めたか…」
「うん…、ここ、は…」
「分んねぇ…、でも、”誰か”が、俺たちをどうにかしようと、してるのは…確か、だな…」


お互いに言葉を途切らせながら会話をした。体が重い。 気を抜けば直ぐに瞼が落ちて来そうな感覚だった。視界に僅かに入る、地面に描かれた魔法陣の所為なのだろうと悟る。

なんとかここから抜け出せるだろうかと、魔法を発動させようと試みるがそれすらも出来なかった。寧ろ逆に疲れたような気がする。


不意に頭上の辺りから足音がした。アレルとクレスは半ば無理矢理体を動かし、腕で支えるようにして上半身を起こした。


「まだ眠っていても良かったのに」


黒いケープを羽織った人物はそう呟く。身長的に女性。


「何だよ、お前…」
「貴方達は、私の為に死んでもらうの」


アレルとクレスは目を見開いた。
深く被ったフードで顔は見えないものの、凛とした声ではっきりと。感情すらも感じられないような声のトーンでそう告げた。


「っ、随分とまぁ…、はっきりと、言うんだな…」
「ほんと、だね…現実味が、無いなぁ…」


苦笑混じりにそう吐き捨てる。2人の発言が気に食わなかったのだろうか、少し顔を反らせた後、軽く手を払う。

手を払った途端、体の中を電気が走るような感覚が二人を襲った。痛みと共に来る苦しさに表情を歪ませ、苦痛の声を漏らした。そしてまた体に入っていた力は抜けて意識を失う。


シャツの隙間から、二人の首筋に刻まれた蝶の痣が垣間見える。
少女はそれを見るなり、胸を押さえる。


「待っててね…、今、私が貴方を…」


少女の願いに似た悲痛な言葉は静かな部屋に溶け込んで、消えた。





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