prologue


ミルは暗闇の中、鏡の前に立った。
電気を着けてはいないが月明かりが室内を照らす。
鏡には所々に罅が入っていたが、写すのには申し分ない。近くにあった鋏を手にすると長かった髪を躊躇う事もなく切った。
ボブショートぐらいの長さになると、切るのをやめてテーブルの上に鋏を置く。

何時も着ていたドレスを脱ぎ捨て、シャツにハーフパンツといったラフな格好になると、黒いロングケープを羽織った。

鏡で再び自分の姿を確認した後、部屋を出て行く。

暫く歩くと大ホールに繋がる扉を目の前にした。開けると同時に軋む音が静かな空間に響き渡った。


大ホールの中心に、直径2m程の魔法陣が二つ。それぞれの中心に横たわる二人の人物。ミルはそれに近付くと表情を覗き込むようにしゃがんだ。ぼんやりと魔法陣は光を発していた。月明かりが大きな窓から差し込む。琥珀色の髪と深いネイビーのような色の髪が鮮やかに目に写った。

眠っている、と言うよりは気絶に近い状態だと言った方が言いだろうか。



「覚悟は、出来たか…?」


不意に後ろから声がする。ミルは立ち上がり、背を向けたまま呟くように答える。



「えぇ、出来てるわ。私は…、願いを叶える」



問いかけた声の主は口元に弧を描く。
ミルは目を一度伏せると、窓から月を眺めた。






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