10

真琴とアレルも、窮地に陥っていた。倒れたアレルの前に真琴は座り込む。意識はやはり戻っていない。じわりじわりと近づいて来る団員からどうにかしてアレルを守らねばと言う意識が芽生えた。かと言って、真琴は魔法は使えない。アレルの使っていたサーベルは離れた所に突き刺さっていた。

咄嗟に腰についていた小さな鞄に手を突っ込む。以前マリアにもらった鞄。今だ嘗て一度も使ったことのない、拳銃とナイフが入っていた。真琴は拳銃を手に取り、団員に向けた。

銃口は小刻みに震えていた。



「だめ、だめ…!アレルは渡さない、連れてなんか…」



拳銃に怯む事なく歩を進めてくる。真琴は引き金に指を掛けた。恐怖と守らねばと言う責任感に似た何かが真琴の中で渦を巻く。


振り上げられた足が真琴の持っていた拳銃を蹴り上げて飛ばす。その刹那に真琴の頬に拳が辺り、その場に倒れ込んだ。痛みと脈拍が一緒になって現れる。口の中を切ったらしく、血の味が広がった。

睨むように視線を戻すと、目の前に大きな手のひらが広がっていた。ぼんやりとした光が見えたと思うと体の力が抜けて行き、瞼が重くなる。抱き上げられた感覚を覚えたと同時に、真琴は意識を手放した。



一方、リードルフ郊外。
押し寄せた重圧を感じて間も無く、結界が崩れるのを目にしていた。最終手段に出るしかないと決意をし、命令を下そうとした時に、マナの放出が止まったのだ。


「やってくれた、ようですね…」


ヴァレンスは僅かに笑みを浮かべる。だが安心したのも束の間で、地震と共に王宮が崩れて行くのが見えた。中に入ったと言われていた隊員は一部、クレス、リノ、アーネストを除いて戻って来ていた。


「ヴァレンス様!クレスとリノ…あとアーネストがまだ帰って来ていません!」
「分かって居ます、ですが今は中には入れません。各隊共に小隊を組み、王宮に近づきます。揺れが収まり次第王宮内及び王宮近隣の捜索…真琴とアレルの安否確認をします」


ヴァレンスの言葉に頷くと各々が動きだし、小隊を作り出す。焦りを露わにしていた一方で、安堵を漏らす声も聞こえた。


「お父様…!」
「ミル…!良かった、お前だけでも無事で…!!」


ヴァレンスはマーヴィンとミルに視線を向ける。助かってよかったと思う反面、騎士団側がまだ助かって居ないのにと言う僅かな反感を抱く。
抱いた感情を忘れるように小さく首を振ると、団員に向かって叫んだ。



「行きますよ、一刻も早く…見つけ出します」


ヴァレンスが先頭をきって走り出すとそれを追うように走り出した。

だが突入して数時間経っても、真琴、リノ、アレル、クレス、そしてアーネストの姿はどこにも見当たらなかった。



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