4



リードルフ郊外。
森付近。

以前聞いた事のある、治癒部隊が忙しなく動いていた。
王宮勤務に当たっていたアーネスト班の一部隊員や、王宮に乗り込んだ小隊の一部隊員が運ばれてきたのである。

王宮の中に立て籠もった犯人達との乱闘になったのだろう、深々とした傷を負った者や高濃度のマナを大量に体内に取り込み過ぎ、意識が定まらなくなってしまった者。
そんな隊員が沢山居てしまっているその場所は、リードルフの住民に世話を焼いている余裕など無かった。

真琴とリノも、微力ながら手伝いをしていたのだが、住民達の声が耳にはいる。


「これからどうなってしまうんだ!俺達の生活はどうなる!」
「早くこの状態を収めなさいよ!貴方達はなんなの?騎士団じゃないの?」


怒りの声が罵倒のように聞こえる。
それに一人一人対応している余裕すらない。
重傷を負い意識を失った隊員に包帯を巻きながら、真琴は視線を泳がせる。一緒に治癒に当たっていたマーティスは低い声で呟いた。


「どうにかしろって言われても、無理なモンは無理なんだよ」
「……え?」
「俺達を万能な道具だと思い込んでるんだろうな、機械でもなんでもないんだけど…」


真琴は深く俯く。
確かに、そんな風に見受けられた。リードルフの住民は普段騎士団が近くにいる所為で頼り過ぎているように思う。
それが高すぎる理想を生み、今に至ってしまった。

手の先に出来ていた魔法陣が消えると、マーティスは立ち上がり苦笑を零した。


「これである程度は大丈夫だな…、悪い、お前に変な話して」


マーティスは普段は騎兵部隊に所属し、小隊の隊長になる程の実力者だ。だが今回は人手不足もあり、治癒部隊に臨時参加し治癒を手伝いつつ、王宮で何かがあれば中に突入すると言う役割を担っていた。
そんな状態なのだから、あまり体力を使わずに休むべきなのだろうけど、自分が何も出来ないからこうして手伝ってくれるのだ。力の無さに歯痒さを感じた。

小走りで去って行くマーティスを目で追いながら真琴も立ち上がると、他の怪我人の元へと駆け寄った。



一方王宮内。


長い廊下を走っていた。
やはり王宮内にあるオーブが影響しているらしく、場所によって少しではあるが濃度に差があった。

国王は救出し、避難させたと連絡が来た為、今はオーブを探していた。
だがその連絡を受けた際に使った通信魔法と度々出くわす侵入者との戦いで徐々に体力は削がれて行く。
そしてつい先ほども一人、倒したばかりである。
片手には何時だかに見たリングが握られていた。
それについていたオーブは割れて壊れており、割れてしまえば魔法は使えないのだと言う事を悟る。


「こんなモン…、どれだけ広まってんだよ…」


出くわす侵入者が全員、同じ物を持っていたのだ。知らない間に秘密裏に広まる違法道具。これが今以上に広まれば、下手をすれば騎士団なんて壊滅しかねない。そして口々に全員が同じ事を言うのだ。


「"魔導師様がくれた"…か…」


クレスはリングを足元に捨て踏み潰す。
低い声で呟いた。



「……、何だと思ってんだよ…」



その声は誰にも届かない。
クレスは再び歩を進め、オーブを探しつつ、アーネストの行方を追った。


[ 91/195 ]

[*prev] [next#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -