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王宮近郊。
王宮とは言え、周りには木々が生い茂る森が近い。
その森の中の比較的拓かれた一部分。
王宮がすぐ目の前にある場所。

そこにアレルと、護衛として着いて来た3人の騎士団員がいた。


「じゃあこの付近の警備を頼むね…、あんまり無駄な体力は使えないから…」
「はい!お気をつけて」


アレルの言葉を聞くなり、3人の騎士団員はそれぞれの配置場所に駆け出した。
その後ろ姿を見送り、影が見えなくなったのを確認すると深く、長く、空気を吐き出した。



「3時間…、保たせる…」



自分に言い聞かせるように、小さな声で呟くと、左胸の辺りを掴む。そのまま目を瞑り少しの間訪れた沈黙。

すっ、と目を開けると同時に足元を中心に地面に大きな魔法陣が描かれた。光を発するそれは、下からアレルを程よく照らす。風が僅かに起こり、地面に落ちた葉っぱがそれに合わせて中を舞った。


両手を前に伸ばすと、その先に手のひらより少し大きめの魔法陣が浮かぶ。
そこから次第にフィルターのような物が広がって行き王宮を囲うドーム状の結界が貼られた。
目に見えるマナが結界に触れる度に弾かれ、弾かれた衝撃で小さな電気を発し、雷が走る。


「っ、ちょっと多く…、見積もり過ぎたかな…」


そう言って小さく苦笑を浮かべた。


一方王宮内ではクレス率いる騎士団員の小隊5つが王宮内を散策していた。
窓から結界が貼られたのを確認する。


「3時間、だよな…」


そうは言われたものの、実際中に入ってみると濃度はかなり高く、息苦しさを感じていた。外で結界を貼っているだけとはいえ、その結界すらマナを使うのだから何かしらの影響を及ぼす事は予想がついた。


「とにかく、全部とことん調べろ!エイミリー様が殺されたと連絡してきたアーネスト班、殺した犯人、そしてマーヴィン様を探し救い出せ!」


四方八方に駆け出す。
戦った痕跡は今の所見られていない。
人の気配すらも感じない程に静かだった。


(俺は、オーブをどうにかしないとな…)



命令した事を自分も行いつつ、今も尚暴走を続け高濃度のマナを放出するオーブを探す事にしたクレスも駆け出した。

この中では下手に魔法が使えない。
連絡の取りようがないのは覚悟の上だった。
そもそも、マナを変換させて魔法を作るオーブが、何故マナを放出するのだろうか。普通ならあり得ない事だ。
"誰か"が異常を来すような事をしない限り。

そう考えるのと同時に思い浮かんで来たのは、この日に王宮勤務に当たった彼と、その班。



「アーネスト…」


無事であって欲しいと願った。

門を曲がり掛けた瞬間に、僅かに気配を感じる。
飛び出すように向けられた長めの刃を瞬時に抜き掛けたサーベルで止める。
サーベルに弾かれた衝撃で、仕掛けて来た人物は後ろに下がり、その隙にサーベルを鞘から抜き出した。刃先をその人物ーーー武装をした一人の男に向けた。


「お前が主犯か?」
「答える義理はねぇよ、お前らも王家もみんな滅べ!死ねばいい!!」


クレスの問いに答える気は更々無いようで、再びナイフを構えると地面を蹴った。
動きを瞬時に見極め軽々と避けると、男の片腕を掴み地面に膝をつかせた。肩に生じた痛みに表情を歪ませる。



「主犯だろうが何だろうが、雑魚に長々と賭ける時間は無いんだよ」



低い声でそう呟くと、より一層に男の表情が歪んだ。




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