2


リードルフ郊外。
直ぐ後ろには木が生い茂った場所。
真琴達はそこに案内された。
沢山の騎士団員が右往左往していた。その中で先頭に立ち指示を出して居たのはクレス。

真琴達の姿を捉えると、傍に駆け寄って来た。


「なんでお前らが…」
「本当は連れてくるのは嫌だったんだけど…、一人でも多く手伝ってくれる人が良い。彼女達も自ら決めた事だよ」
「そうか…」


真琴とリノが来ると思ってはいなかった為、若干戸惑いを見せたものの、アレルの言葉に小さく頷くと視線を王宮に向ける。


「状態は言ってしまえば悪い…、マナが濃すぎる所為で中の奴らとの通信魔法も上手く出来ない上にエイミリー様を殺した奴らとの乱闘状態。王宮内のオーブの暴走の原因も分からないままだ…国王様も救出出来ていない」
「今日の王宮勤務って誰…」


クレスの言葉を聞き、今日の夜勤の班がどこだったかを考え出した。
暫く黙り込んだ後、焦ったような表情を浮かべる。


「アーネスト…?」
「あぁ、今日はアーネストの班が王宮勤務…」


アーネストは彼らの同期で階級はアレル達より下なものの実力はある。そんな彼とはいえ、今の状態が芳しくない以上焦りを感じさせる。


「今すぐ、今すぐ僕が王宮に乗り込む」
「待て、今作戦を練ってる最中だ」
「だけど…中の状態が良くないのにこのまま待って居たら…」
「落ち着け、アレル。直ぐに決める」


今すぐに王宮に乗り込もうとするアレルの両肩を掴み、落ち着くようにクレスは諭す。
その言葉に落ち着きを取り戻したアレルは歩み掛けた足を止めた。



「まず、濃すぎるマナのこれ以上の漏出を防ぐのに王宮の周りに結界を貼る。リードルフの住民は先に避難させてあるから大丈夫だとは思うけど、オーブ爆発の可能性も考えて…」
「王宮を囲うだけの結界となると、かなり人数が割かれるよね…」


王宮は小さくはない。
それ全体を囲うのだとしたら、それ相応の体力と人数を必要とした。
だが現実をみると、中での状況がはっきりしない上にこれから街中のオーブが異常を来す可能性も否定出来ない。
下手に人員を割くのは得策ではなかった。


暫く考え込んだ後、アレルは呟く。


「僕がやる。僕が結界を貼る」
「は…?お前一人で?」
「うん、僕なら一人でも覆えるぐらいの結界は貼れるよ。下手にこっちに人員を割くなら、僕一人の代わりに王宮内に連れて行って」


アレルの言葉に、反論しようと言葉を紡ぎかけるクレスだったが、彼自身がアレルの実力を知っていた。
言われた通り、 多勢でアレル一人の動力よりも一人で多勢の動力を稼いだ方が正解に近い。


「……、分かった。 結界に集中出来るように、数人護衛に着けるぞ」
「うん、ありがとう。あと、結界は多く見積もって3時間だ…、それまでに、決着つけてね」
「あぁ、それ以内に終わらせる」


それを合図にするように、二人はお互いに背を向けてそれぞれの持ち場に向かう。
向かう最中にアレルはぴたりと足を止めた。


「真琴、リノ」
「?」
「君たちはここで、救護とか住民の警備にあたって貰える?」

二人は目を見合わせて力強く頷いた。

「分かった、私に出来る事をする」
「任せて!"天才"と呼ばれる実力、見せちゃうから!」


アレルは口元に小さく弧を描くと、二人の頭に順々に手を乗せ優しく撫でると王宮に向かって駆け出す。アレルの後を数人騎士団員が追って行った。


「俺たちも行くぞ。状況が芳しくない…急げ!」


クレスの言葉を合図に走り出した。



[ 89/195 ]

[*prev] [next#]



×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -