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眠りに入ってから早々に、外が騒がしくなった。
真琴はその騒がしさに目を覚ます。バタバタと慌ただしい足音と叫び声がしていた。真琴が何かと思ってベッドから抜け出すと、リノもそれに気付いたらしく目を覚ました。


「何ー?こんな時間に、騒がしいよ…」
「覗いてみようか…」


真琴が扉に手を掛け、ゆっくりと開ける。
何時もなら静かな廊下には沢山の騎士団員が右往左往していた。

明らかに何かがあったんだと分かる。
それを聞こうと声を掛けようにも掛けられるような雰囲気では無かった。


真琴に続いてリノも扉越しに覗き見た。


「なんか…良く無い事でも起きたのかな…」
「……多分?」


丁度前を通り掛かった、然程焦りを感じない隊員を見つけ声を掛けようと一歩前に出るとそのタイミングで丁度人が通り掛かり半ば正面衝突のような形でぶつかった。


そのままバランスを崩した真琴は後ろに倒れそうになるも、ぶつかったもう一人の伸ばした手が倒れないように支えた。


「ごめんね、急いでて…大丈夫?」
「アレル!」


真琴を抱きとめたのはアレルだった。
散々走り回ったのだろう、汗が頬を伝った。真琴は体制を立て直すと、アレルに問う。


「何があったの?こんな時間に…」
「えっと…」



真琴の隣にリノは立ち、アレルに視線を向けた。
答えるべきか否か。僅かに視線を反らせる。


「いつかは、バレちゃうもんね…」
「?」
「ここまで騒がしいって事は、結構重大な内容でしょ?」
「うん…、言っておいた方が良いかもしれない」


リノも直属である所為か、張り詰めたような雰囲気を感じ取り何かを悟る。
反らしていた視線を戻すと、アレルは静かに告げた。



「この国のお妃様…エイミリー様が殺されたんだ」
「…!」


真琴自身、会ったことがないとは言え国のお妃様ともなれば重大さは伺える。漸くこの騒ぎの意味を理解した二人はお互いに顔を見合わせる。


「それで今、王家の城から異常な濃度のマナが放出されてる…多分王宮のオーブが発生させてるんだと思う。このままだとどんな影響を及ぼすか分からない」


お妃様を殺した犯人がやった事なのだろう。
城から目に見える程迄に濃くなったマナはオレンジ色に染まり、空気中に漂う。マナは普段は目に見えない無色透明の物だが濃度が上がるに連れて目に見えるようになってしまう。そしてその濃度が一定基準を超えると自動的にマナ自身がマナを変換し、魔法を発するのだ。
連鎖的に爆発だって起こしかねない、危険な状態になる。
これだけの濃度となれば、オーブにすら悪影響を及ぼす事ぐらい目に見えていた。


「こんな状態で魔法を使ったら、異常な体力の消費をするだろうね…早く止めないとまずい。だから二人はここで待ってて、避難指示があるまで…」
「あたしも行く!手伝うわ!」


アレルの言葉を遮るようにリノは告げる。


「リノ…?」
「私も!役には立たないかもしれない…けど…」
「真琴まで…」


アレル自身としては、ここで待たせておきたかったのかもしれないが、二人の目がそうさせないように訴えて来た。


「分かった、とりあえず移動するから着いて来て…!」


真琴達はアレルの後を追い、城を出た。

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