prologue



リードルフに一番近い森の中。
あそこは日中は付近が比較的賑わっていても夜になればその付近すらも静けさに包まれる。
しん、と静まり返ったその場所は、風で動き草木がお互いにぶつかり合う音以外は聞こえて来ない。


一人の青年は、そこの木の太い枝の上に寄りかかって座る。手に持っていた赤い林檎が月光に照らされて鮮やかな赤を発する。

風が吹く度に少し長めの髪が靡くように揺れ、左目の目尻に小さく印された蝶の痣が姿を見せる。



「今しかない、今日以外にチャンスはねぇんだ…」
「この夜、まだ明けない内に忍び込め…!」



青年はその声を耳にし、視線を木の下へ向けた。
手には武器を持ち、額に脂汗を浮かべた男が数名。
全員の右の額から首にかけて、歪な刻印が刻んであった。


「………、なんだ…?」


青年は小さな声で呟く。
動乱が間も無く、始まろうとしていた。





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