シンドリアの月末は悪夢である。
とはいっても悪夢なのはジャーファル率いる文官たちなのだが。月末精算、報告書、企画書etc.…………まあ、大変過ぎて過労死する人間が出てもおかしくないとだけ言っておこう。

そして今月もやって来た。月末が。
文官たちはいつもより覇気がなく、ジャーファルもまあ、とてもとてもピリピリとしていた。
なぜなら王であるシンドバッドが逃走したからだ。

ジャーファルに「なんであなたは!そうやって後でやる後でやると言って毎月の如く月末までやらないのですか!」と鬼も逃げるであろう形相で言われたものだから
案の定逃走。

深いため息をついてシンドバッドを探していると以前位置魔法で呆気なく王を捕まえたナマエにばったりと会ったジャーファルは早かった。

「ナマエ!シンをまた位置魔法で見つけてください!!」
「は…………はい。かしこまりました……が、そんなに切羽詰まってどうしたんです?」
「あのバカ王が…………」

ことのあらましを説明してもらい、毎月こんな感じということを新しく知る。

「だから文官さんたちはあんな感じになってたんですね…………ーーはい。王の位置わかりましたよ〜あと、一応報告しとくことが…………ってジャーファルさん行っちゃった」

ナマエの話しを最後まで聞かず、お礼だけ言うとさっさと行ってしまったジャーファル。
驚かないといいんだけど……とナマエは思っていた。

そして案ジャーファルが驚くことになるのは時間の問題である。




無事シンドバッドを見つけ、それなりの怒りをぶつけ、部屋に閉じ込めたジャーファルは重い足取りで月末決算室ーー別名地獄の執務室に歩みを進めていた。これから沢山の書類と葛藤し、自分と戦う。部屋の前で大きく息を吸ってさあ!と扉を開けて………………閉めた。


「確かに私は文官たちに頭から煙を出すような気持ちで終わらせてくださいといいましたが……」

1人ぶつぶつ言ってるジャーファルはそれはまあ、変な人に見えただろうが本人にそんな余裕はなかった。もう一度ドアを開けたがやっぱりさっき見た光景と変わらない。


「み、みなさん!どうしちゃったんですか!!!あ、頭から煙を出して……!?」


ジャーファルが見たものとは文官が揃いに揃って、正確に言うと耳から煙を出しつつ書類と戦っている姿だった。

「あっ!ジャーファル様!ジャーファル様もどうですか?ナマエさんから、元気爆発薬っていう魔法薬貰ったんですよ!見た目はおかしいけど俺たちはこの通り元気でやる気に満ち、書類も捗りますよ!」

「そ、そうなんですか……」

彼らは確かに姿こそ異様だか、いつもの死んだような目ではなく闘志が感じられ、また、それに答えるかのようにいつもの倍以上捗っていた。
しかし政務官であるジャーファルは葛藤する。
トップである自分も彼らのように耳から煙を出すのかと。それだと部下に示しがつかないし、なによりジャーファル自身の恥じらいも邪魔をする。

今現在目の下に隈をつくり、ピリピリとしていた彼であったが、「私は結構です。少しの間王を探さないといけないので席を外します」と、自分の分の書類をどっさりと持ち、ちゃっかりと元気爆発薬を1つ袖に隠して出ていった。

もちろんシンドバッドを探すというのは建前で(もう既に見つかっている)ジャーファルは自室に籠り、これまた丁寧に部屋に入るなという貼り紙までして、元気爆発薬を1つ口に含んだ。そのあとは言うまでもない。


その後違うところで、たまたまジャーファルの部屋の前を通ったシャルルカンは、「シンドバッドの冒険のジャーファルさんって火を吹くんだよな…………これって事実だったのか!?」と一人モヤモヤとすることになるとは露知らず


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マナフィ様リクエスト作品、元気爆発薬で煙を出しながら仕事する文官一同でした!

企画参加ありがとうございました!


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