私が言うのもなんだが、私の彼氏はあまり表情が変わらない。
基本笑顔を貼り付け、シンドリアの母と呼ばれるジャーファルはそれはまあ、国民を包み込んであげるくらいのやさしい表情であり、彼女である私に対してもいつも同じカオで、変わるのは徹夜明けの疲れた顔くらいでしかない。
まあ、それが彼なのだから仕方ないとは思っているもののやっぱり違う表情もしてほしいしたまに無理して私とつきあってるのかなって自己嫌悪に陥るときもあるが、それがジャーファルなのだから…とその考えを振り切り今に至る。
「ちょっと!ナマエ!!聞いてるの!?」
「…えっ、ああ、ごめんごめん。ってこれ私?」
「そうよ!うまくできたわ。貴方元がいいんだから化粧とかしっかりやればいいのに……」
「あーうん。そうだね」
今日はシンドリア名物の謝肉宴。私は今まで友達に化粧と髪のセットをしてもらってこの宴に参加しようと思っていて今終わったらしい。
いつもと違った髪形と化粧。そして煌びやかな服。今回謝肉宴で初めてちゃんと着飾ってもらいとてもワクワクしてちょっと馴染みの人たちに見せびらかしに行こうと思う。
ある程度の知り合いに見せびらかせ、「馬子にも衣装だなー!」とか「えぇ!まじでナマエ?!」を受けとったところでやっぱりなんだかんだ言って一番見せたかったあの人のもとに行く。
「お飲物いりませんか?」
「ああ、どうも……ってええっ!?ナマエですか!?」
そういうや否やジャーファルは顔を覆いしゃがみこんでしまった。
私がわたわたしていると隣にいたシンドバッド様がニコニコしながら「いやあ、ナマエがあまりにも美しくなってるからジャーファルが照れてしっまたな。な?ジャーファル?」というものだから私はびっくりしてジャーファルを見た。
「ジャーファル……?」
「も、もう、今までのが台無しじゃないですか」
「台無しって……」
「ああ、違いますよ?あーもう、面と向かっていうのは恥ずかしいですね」
ジャーファルはそのあと云々言ったかと思うと
「すごく綺麗ですナマエ」
と初めて見る赤い顔で照れている。
私も思わず赤くなり、だけどそれよりも嬉しさがまさって多分一番いい笑顔で「ありがとう」っていったはずだ。
その一件からジャーファルはクールにきめたくていつも澄ましていたということを聞いて笑ってしまったのはここだけの話だ。
(ナマエ、本当に見間違えるくらい綺麗です)
(なんか素直なジャーファル新鮮だよ。でも私はすごく嬉しい)
(この後私の部屋に行きましょう)
(ん?俺は放置か!!!放置なのか!!!王なのに!!!)
−−−−−
蒼夜様リクエスト
謝肉祭ヒロインとジャーファル
リクありがとうございました!!!
prev next