小説 | ナノ



賑やかな町。目立った貧富の差も無く沢山の人々が声を掛け合って(客を呼び込み合って)いる。前の世界では見たことも無いような服装に食べ物を見てユリは益々この世界について興味を持ち始めた

だがしかしここで問題な事が一つ
ユリはお金を持っていなかった。否、詳しく言うとお金はある。肌身離さず持っていた四次元ポーチ
――要は重さを感じずにどんな物でも入る魔法のポーチはローブの中にあったので少しのお金と服も箒もあり困る事はない。が、さっきチラッと見た限りここの通貨がユリの持っているのと全く違った為今持っているお金は使えないも同然。その為お店に入るに入れず街の声を聞きながら歩き回っていることしか出来なかった。

そんな折に聞こえた声

「いってーなあ っておいおいお前、どう落とし前つけてくれんだよ?ぁあ?」
「す、すいません……」

賑やかなところから一転やはりこの国にも悪党はいるのかと感じつつその声の聞こえる方に行ってみると

「すいませんじゃねーだろーよぉ? お前俺の事なめてんのか?俺のこと知らないとはいわせねえぜ?どう落とし前つけてくれんだよ」
「そ……それは……」
「おいおい〜なんか言わないならお前を痛めつけるまでだよなぁ? それとも奴隷商人に売り渡してやろーか! はっはは」

いかにもガラが悪そうな男と絡まれている女性の姿。周りの人は遠巻きに見ているだけでユリは近くにいる人に状況を聞いてみた。


「あんた旅人か?あいつには気を付けた方がいい。やっかいな奴で奴隷商人と繋がってるから逆らったら人生が終わったようなもんだ」
「そうですか……奴隷ってこの国では認められてるってことですよね?」

「お嬢さんはどこから来たんだい?確かにこの国で奴隷は珍しいが他の荒れてる国では日常茶飯事だ。それに近頃ここでも人攫いにあって奴隷商人に売り飛ばされてるっていう噂だ。だから関わらない方がいい……って何処いくんだい! 」



ユリはおじさんの話を聞いていたにも関わらずその問題の中心に歩みを進め女性と男の前に立つ

ユリは奴隷制度があることに少なからずビックリしていた。何時の時代だと1人ツッコミしてしまうほどに――そもそもこの町を歩いてて、電化製品がないのだ。ユリは両親とも魔法使いでマグルという魔法が使えない者ではなかったから余り電化製品に詳しくはないがスイッチ一つで物が動いたりすることは知っている。しかしここはそれ以前の問題で本当に別世界なのだと思い知る。話は戻り、いきなり歩き出したユリに周りの人はチラチラと彼女を見るが本人はいたって気にしていない



「その女性を離してください」


ユリは怖気づく様子も無く凛とした声で一言そう言った


「あ?なんだ?てめえ?」

男はユリを見、女だとわかった瞬間ゲラゲラと下品な顔で笑いながら

「わざわざ俺の元に来るなんてとんだ馬鹿だなあ?お前が代わりに金払ってくれんのか?でも残念だなあ。たった今この女は奴隷商人に売り飛ばすことを決めたんだよ」

その言葉を聞いた女性はこの世の終わりのような顔をし、立っていられず座り込んで両手で顔を覆ってしまった。しかしユリは表情を変えずに少し面倒くさそうに

「その女性はあなたに謝ったでしょ。もういいじゃない、離しなさいよ。二回も言わせないで」
「っ!てめえ相当俺を怒らせたいんだなじゃあお望み通りお前からぶっ飛ばして奴隷にしてやる。俺に恥かかせたこと後悔すんだな」

そう言ったかと思うと男は、変な黒い靄がかかっている短剣を取り出しユリの前にちらすかせる。
周りの野次馬達は魔法武器だとか言っておりユリはやっぱりここにも魔法自体はあったのかと考えていた。その為、男はまたもユリにスルーされ馬鹿にされたと顔を真っ赤にし襲いかかってきた。短剣から黒い色の魔法らしきものが降り注ぐ。
ユリは素早く杖を取り出し

「プロテゴ(護れ)」

攻撃を弾き飛ばす呪文をかけ、防ぐことが出来た。

「なっ!!お前魔法使いか?!」
「……」

男の言葉を無視し、やはり自分の魔法が問題なく使えることがわかったため容赦なく魔法をかける。

「ペトリフィカス・トタルス(石になれ)」

そうして固まった男を縄を出し魔法で縛り上げあっけなく事はついた。
そしてあっけにとられている女性の元に行き「エピスキー(癒えよ)」と治癒の魔法をかけ、もう問題ないことを告げ去ろうとした。

「あの……」
「あ、あの男は固まってるだけで死んでませんし縄も頑丈なので大丈夫ですよ。それに周りの人が連絡して下さったみたいですし、もう平気です」
「そうじゃなくて……!本当にありがとうございました」

すると周りからも拍手がかかり、すごかったぞ!やら、魔法使いだったのか!などと声を掛けられ変に目立っていたことに今更ながら気がついた。
どうこの場から切り抜けようか考えているとさっきの女性から
「お礼をしたいので私のお店に来ていただけませんか?見たところ旅人のようですしお部屋お貸ししますよ」
と願ってもみない提案を二つ返事で受け、彼女の店へと向かった。






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