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「……っ、……は? 何処よここ」


見渡すとそこには温かい光が差し込んでいる木々の中に1人、この場所とは不釣り合いなローブを着ている女性――ユリがそう零しながら起きあがり、そして不思議で仕方なかった。なんせつい先ほど死んだはずの自分がこうして地面に立ち、息をしている。いろいろ考えを浮かばせていたが一向に理解が出来ず、とりあえずこの森から出ようと思い立ち適当にふらつき始めた。


「あ、魔法って使えるのかな」


今更ながらだが自分が魔法使いであることを思い出したユリはパッと浮かんだ呪文を唱える


「アグアメンディ(水よ)」

すると杖から水が出て来たのでついでにコップも出し、一口水を飲む。のどが潤い気持ちが落ち着いてきたため現状を歩きながらひとつひとつ確認し始めた

(あのとき死の呪文を受けたから死んでいるはず。もし生きていたとしても今いる場所がおかしい、今の時世こんなに平和なところはないはずだし……)
 


「魔法は使えた、けどここは私のいた世界じゃない」



ユリはひらけた森から見えた景色に向かって1人ごちた
理由は簡単。そこから見えたのは自分がいた世界ではありえない生物がこっちに向かって来ていたからだ。その先に見えるのは国だろうか、ユリはあの国で情報を集める事を決め、その変な生物に向かって 「ステューピファイ(麻痺せよ)」と麻痺の魔法をかけた。
殺さなかったのはこの生物があの国にとってどのような存在として扱われているかわからなかったからである。もしも神として祀られている存在であり殺してしまった場合、違う世界に来てそうそう重罪になってしまうだろう。だからある程度時間が経ったら消える麻痺をかけ、後はお役人さんに任せるということだ。

ユリはその生物を一目見、何事も無かったかのように再び歩き出した。実際は魔法が効いてよかったーと思っていたことは当の本人以外知る由もない。


そしてちょうどユリと入れ違いでやって来た二人組がいた。


「シン、どうしたのですか、いきなり止まって……早く南海生物を仕留めてください」
「……いや、仕留める必要はないようなものだ。いきなりおとなしくなったからおかしいとは思ったがこいつ麻痺している」
「麻痺ですか? 」
「ああ、しかもこの感じからいって相当な魔法使いだ。ジャーファル、この辺に人はいたか? 」
「いいえ、私は見て無いですね」

二人組――シンドバッドとジャーファルは南海生物をみながら今しがたこの魔法をかけた人物について考えていた。彼らが知る限り熟練の魔法使いは8人将の彼女しか知らないしシンドリア自体、魔法使いがわざわざここまで来て仕留めはしないことを知っている。そもそも相当な魔法使いがいないが……
そうして2人のうちの一人はその人がこの国で何かをもたらしてくれるだろう――そう確信していた。
早く見つけ出さなければいなくなってしまうと感じたシンドバッドは更なるシンドリアの発展を期待し微笑をうかべていた。








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