小説 | ナノ





そう上手くいく筈もなく、アリババの交渉は決裂してしまった。
ユリはというと、シンドバッドから話しを聞いていた

「煌帝国?ジュダル?アルサーメン…ですか?」

「ああ。説明すると――」

シンドバッドからこの3つの言葉についての説明を聞き、あらかたを理解した頃ふと疑問がよぎった

「でも、それをなぜ私に?」

「君は特別だ。なぜなら魔力(マゴイ)の限界がなく、他の人には出来ない魔法があるからな。それを彼らは欲するはずだ、必ずといってもいいだろう。だから話したのさ、煌帝国は置いておいても、そのジュダルという男とアルサーメンには気をつけて欲しい」

「わかりました」

ユリは彼らにはまだ会ったことがなかったが、シンドバッドの話しを聞く限り私の世界でいうヴォルデモート卿みたいな悪の組織であろうと予測し、シンドバッドに肯定の意を示した。

「では、霧の団の元に報告しに行かねばな。ユリ、アリババ君たちを呼んできてくれないか?」

「はい」

       。
        。
       。
        ○
        。
       ○


ユリはアリババのいる部屋をノックし、中に入る。

「アラジンも、モルジアナちゃんもここにいたんだね」
「ユリさん!」
「アリババ、シンドバッド王が霧の団に今日の結果を伝えに行くぞって」
「!?……ユリさん、俺、なんて言ったらいいか…」

ユリはアリババの姿を見て心が痛む。そして誰かと被っていると感じていた。その誰かとは前いた世界の選ばれし男の子の事であるが、その状況が今のアリババと似通っていて、彼の気持ちが痛いほど理解できたのだった

「周りの人からの重すぎる期待がかかってさ、嫌だよね。なんで俺がって思うし、私だったら逃げ出したくなるよ。そう思わない?」

アリババは、顔をあげてユリを見た、アラジンも、モルジアナも同様に。ユリは続ける

「……でもさ、アリババは1人じゃない。アラジンやモルジアナちゃんがいるし会って間もないけど私だってアリババに気持ちを動かされた1人だし。1人で背負い込む必要はないんじゃないかな?あなたの周りにはあなたを思って心配してくれている人がいるんだから。」

「ユリさん……」

「それに、何を言えばいいかって言ってたけど、大丈夫。なんのためにシンドバッド王が霧の団に入ったのか。こういうときは年長に任せればいいんだよ」

これで少しでもアリババの不安が取り除けていればいいのだが、とユリは言ったのだが想像以上に効いたらしく、アリババはさっきよりも全然元気になっていた

「ありがとうございます」
「ユリおねえさんって、なんかお姉ちゃんって感じがするよ」
「はい、私も今そう思いました」

ユリは少し驚き、笑顔になり

「わあ、じゃあ私は3人のお姉ちゃんだ」

そういうとアラジンがユリに飛びついた。若干ユリの胸の位置にいるような気がしたが特にそういったことは問題がないためそのままにしておく。「ユリおねえさんやわらかーい」という言葉にもいささか疑問を感じてはいたがユリにとっては小さい子供であるから、何がどうとまでは聞かなかった。

アラジンを抱っこしながら、そういえばアリババを迎えに来たんだったと思った頃にはすでに遅し

「ユリ、アリババ君は……ってアラジン!!なにをしているんだ!!ユリの胸に顔を埋めてっ!!羨ま…イタッ!」
「シン、黙ってください。アリババ君、行きますよ。そしてアラジン、ユリから離れなさい」

渋々とユリから離れたアラジンはマスルールに「ジャーファルおにいさんってやっぱり怖い人だね」というと「ユリさんが絡むと余計…」と言っていたそうな。



そして、霧の団が集まっている所に行き、交渉決裂した事を話していると頭上から1人の声が聞こえた


「お――――い、シンドバッド――――!!!」


ユリもその声が聞こえた方を向き、感じ取った。なぜか彼のルフが黒いことを。そしてシンドバッドが零した言葉で彼が例の要注意人物、ジュダルであるということを…





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