小説 | ナノ



ユリが起きてから数日経ち、あまり親しくなかった他の食客の人たちや八人将と多少なりとも気軽にあいさつできるようになったとある日のこと。
なんだかんだ一番心を開いているヤムライハの元に行くと、なにやらブツブツ言っている様子でどうしたものかと声をかけた。

「ヤムライハ、1人でブツブツ言ってまた魔法でも考えてるの…?」

「……ああ、ユリ! タイミング悪いわよ!今、ジャーファルさんから連絡あったのに…」

丁度、バルバッドに着いたジャーファルからの連絡が終わったところにユリが入って来たため入れ違いみたいなものになってしまったのだった。

「ジャーファルさんから? 何でまた連絡が?」

「うん、それがね、バルバッドについたのはいいものの王が金属器全部盗まれちゃって、それでも一大事なのに、やっかいなことに首を突っ込んでるらしいから応援が欲しいって連絡がきたのよ。でもシンドリアからバルバッドまでは早くて1週間………」

いきなり言葉が止まったヤムライハ。ユリも金属器ってなんだったっけ?と今までの記憶を掘り起こす。そして思い出したと同時に聞こえたヤムライハの声にビクッとした。

「そう! 1週間かかるのよ!」
「そ、そうなんだ…」

ヤムライハの剣幕に若干押されぎみのユリだったがあまりにも真剣そうなので黙っているのと同時になにか嫌な予感がよぎってもいた。


「でもユリ、あなた言っていたわよね? 瞬間移動が出来るって。えっとなんだっけ? 姿現し?」
「姿現し……。うん、できるけど……! まさか!」
「そう!そのまさかよ!」

ユリの感じていた嫌な予感とはこれだったのだった。


「姿現しでバルバッドまで行って来て!」


「………やっぱり」

ユリの魔法には姿現しという瞬間移動が出来る魔法がある。
それを使えばたとえ船で1週間かかってもそれは一瞬。そのかわりこれを習得するのは大変であるがまあ、ユリは元の世界でも優秀だったということだ。

ジャーファルの性格を考えても連絡をするということはいち早く応援が欲しいのかもしれないと短い時間ながらもジャーファルと一緒にいてそうだと感じたので、
ユリは杖があることを確認し、ついでにいつものローブ、魔法ポーチを持っていたので渋々ではあるが気持ちを切り替える

「応援第1号。バルバッドまでいってきます」

そういうが否や、ポンッ、という音とともにユリの姿はヤムライハの前から消えていなくなった。

「つくづくユリの魔法って未知数だわ」

ヤムライハはユリがいたである場所を見ながら呟くことしかできなかった



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