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話はユリが部屋を出た直後に戻る。

「………(毒を盛られるとは思ってもみなかった…)」

警戒心が足りなかったのであろうか、ユリはまさか毒入りの飲み物を渡されるとはこれっぽっちも考えていなかった。生憎、魔法ポーチはローブの中にあるため部屋に戻らなくてはならず、もう歩く気力はなかった。

よりによって即効性の毒か…と内心思い、そして近くにある壁に寄りかかり、魔法を使って少しは和らげようとしたが、指先が麻痺して杖を取ることすらままならない。
誰かが通りかかってくれるだろうと楽観的に考え、それとは裏腹に血を吐きつつもユリは考えていた。

本人には心当たりはあった。1人でいるときに向けられる殺気と視線。きっと食客なのが気に食わない人の犯行なのかなーと考えているところで意識が曖昧になってきていた。

「あれ…、もしかしてこのまま死ぬとか…ゴホッ」

視界がぼやけてきたユリが最後に見たものは緑と銀色のなにかであり、ユリッ!!と彼女を呼ぶ声だった。




      。
     ○
      。
      ○ 
     。



「残ってもらってすまないな、いうまでもないがこの毒に関してシンドリアではあってはならないことだ」

ところ変わってシンドバッド、シャルルカン、マスルール、ピスティの4人はさっきの事も含め、残っていた。

「犯人はあの侍女で間違いないんすよね」

シャルルカンの問いにシンドバッドは頷き

「ああ、でも問題ないだろうな宮内からは出れないしあいつがいる限り大丈夫さ」

含みを持った言いようにピスティはあからさまに疑問を浮かべ、シャルルカンも同様である。しかしマスルールはいつもと至って変わらず。

「あいつ…?マスルールさんはわかるのか?」

「いや…、ジャーファルさんを怒らすと怖いってことだけなら」

「そうだな」

相変わらず2人には理解されていないようだが王が言うなら大丈夫だろうと張り詰めていた空気もいくらか和らぎシンドバッドの「ユリの様子を見てくる」という言葉によりひとまずお開きとなった。



そのあと無事にヤムライハによりユリの容体はよくなり、残るは目が覚めるのを待つのみとなったが、思ったよりも長い間目が覚める事はなく、起きたユリを見る事が出来ずにバルバッドに向かった3人――シンドバッド、マスルール、ジャーファルだったが、ジャーファルは後ろ髪引かれながらもそれを表情に出すことはなかった。


「心配な気持ちは俺も同じだ。起きたらすぐに連絡するように言っておいたからそう気落ちするなよ」
「私が気落ちしていると?」
「ああ。だよな、マスルール」
「はい」

ジャーファルが気落ちしているのも無理はない。
なぜならユリに犯行を及んだ侍女はジャーファルに気があり、ジャーファルと仲良くしているユリが憎かったからと言ったのだった。だからといってジャーファルは情けはかけない。あの時シンドバッドが止めなかったら、ジャーファルは彼女をどうしていたことか。

だから彼はバルバッドに向かう前に一言でも謝りたかったのだ。
しかしそれは叶わず、早く目を覚ますことを祈りつつバルバッドに向かった。


そしてユリが起きたのはその後すぐのことであった



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