小説 | ナノ



※多少の流血表現あり




   事件は突拍子も無く始まった





「いやあ、いきなり呼んで悪かったな」

そう話したのはシンドバッドであり、この部屋にはシンドバッドは勿論のこと、八人将全員が呼びだされていた。そして明らか場違いなんじゃ…と思っているユリも一緒に呼び出されていた。そして隣に座っているヤムライハにこっそり聞く。

「ねえ、私、どう見ても場違いじゃない?」
「そう? そんなことないと思うけど」

ヤムライハは気にした様子も無く、シンドバッドに目線を向ける

そして話しだしたシンドバッド。


「今回呼んだのは、バルバッド国に船舶貿易を停止されたことを伝えようと思ってな」

「な、なぜですか!?」

ここでいち早く反応したのはジャーファルであり、信じられないとでもいうような顔をしていた。ユリは侍女が持ってきてくれていた紅茶を飲み、またヤムライハに聞く。

「バルバッドって主要な貿易国………な…の?」
「ええ、まあそうね、って顔色悪いけど大丈夫?」
「…え!? あ、うん平気平気」

いきなり顔色を悪くしたユリだったが、シンドバッドはこちらに気づくことはなく話を続けていたのでヤムライハはユリを心配しつつも聞いていた。

「――だから、俺とジャーファルとマスルールの3人でバルバッド国王に話しつけに行くからその間、君たちにここを頼も…」

シンドバッドはその先を続ける事は出来なかった。いきなり鳴った、ガタンッというイスが倒れる音、そしてユリが辛そうに

「…すいま…せん、失礼しま…す」

と今に倒れそうであるにも関わらず早歩きで出て行ってしまったからだった。

「ユリ、どうしたんだ?いきなり出て行って」
「顔色悪そうでしたけど…一体…」
「………王様、この飲み物出したのって誰ですか?」

ヤムライハが静かに問う、だがシャルルカンにはヤムライハが手を固く握り、震えているのが見えていた。
シンドバッドが答えるよりも早く、ピスティが「侍女の人だよ、だけどなんで?」と聞き返す。するとヤムライハは震えつつ、でもはっきりと言った。


「ユリの飲み物に、毒が入っていたと思われます。今すぐに処置しないと…」
「……血の匂いがします」

ヤムライハの言葉に同意するかのように言ったマスルールにみんなは驚愕を浮かべる。シンドバッドはすぐさま、ヤムライハに解毒薬を持ってくるように頼み、スパルトス、ヒナホホ、ドラコーンに宮内から怪しい人物がいないか、そして宮内から誰も出ないように頼んだ。
そしてジャーファルに言う

「ユリを探して医務室に連れていってくれ、残った人は少し話がある」


ジャーファルはすぐさまユリを探しに行った。
するとユリはさっきいた部屋からそう遠くないところの壁に寄りかかっていた。
近くにくると目立つ赤い液体。寄りかかっているといっても荒く息を立て、辛うじて意識がある状態だった。


「ユリっ、大丈夫ですか!?」
「ジャー…ファル…さん、話し…合い…は…?」
「なに言ってるんですか! いったん、中断に決まっているでしょう」
「そ…ですか、…すいませ…ん…ゲホッ、」
「……!! 失礼します」

咳と一緒に出た血を見たジャーファルはユリを横抱きにして、急いで医務室に連れて行った。


「(思ったよりも症状がひどい。誰だ、ユリに毒を盛った奴は)」


   
   ジャーファルは怒りを抑えられずにいた。



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