小説 | ナノ




「高度な魔法使いな訳だし使えるのでしょ?」

「私の職は闇の魔法使いを捕まえる仕事だったから、使う機会はもちろんなかったよ。だって闇を祓う人物が闇の魔法使ったらね」

そうして出てきたユリに気付かれぬよう物陰に隠れた2人――言わずもがなシンドバッドとジャーファルである。
元はといえば中庭で魔法をやっているユリの元に向かったヤムライハを追おうとシンドバッドが提案し渋々ながらもついて行ったジャーファルだったが彼らが着いたころにはヤムライハの部屋に行ってしまっていた。
しかしシンドバッドは悪気も無く言ったのだった。

「じゃあ盗み聞きしよう!」
「なに言ってるんですか、私は戻りますから」

ジャーファルは断りを入れたがシンドバッドに「まあまあ」と半ば強制的に連行され今に至ったのだった。
彼女たちの話を(盗み)聞いた2人は内容が思ったよりも衝撃的だった

「杖を一振りするだけで人を殺すことが可能とは…」
「ああ…」

珍しく騒がないシンドバッドを見たジャーファルはユリに対し心を痛めた。
彼はシンドリアの為となるなら他人を利用出来る人であるからだ。きっとシンドバッドはユリを離すつもりはないだろう。そしてユリは今まで使わなかったあの魔法を使わされるかもしれないと。
それにしてもジャーファルは他人に対し余り関心が向かないはずだったが、あの時腕を掴まれてからというものの、ユリの事を気にしていることが多くなった。
しかしそれからは会ってもあいさつ程度で、しかもほとんどユリと会うことはなかった。何故ここまで気になっているのかジャーファルにはわからなかった。

シンドバッドと別れ、戻ろうとした時、ユリの元にピスティがやって来た。
とっさにジャーファルは隠れてしまい、立ち話を始めたユリとピスティに出るに出られず、これまた盗み聞きとなってしまった。

「ユリ〜!!やっと見つけた!」
「ピスティさん、お久しぶりです」
「なかなか会わないんだもん、何処にいたの?」
「ここ最近はずっと図書館にいたもので…」

ジャーファルはだからユリと会うことがなかったのかと納得していて、やっぱり盗み聞きは悪いと思い出て行こうとしたがピスティの「ところでユリってジャーファルさんとできてるの?」という言葉に固まってしまった。

「(私とユリさんが…で…できてる!?どういうことですか)」

そのジャーファルの心の中を代弁するかのようにユリが言った。

「私とジャーファルさんが、ですか?」
「そうそう!なんか、ジャーファルさんとユリが親しげだって侍女の間で話題になってるらしいよ〜」

なぜ話題になっているかというとあの手をつないでいた事件もそうだが、八人将以外あまり自分から挨拶をしないジャーファルが自分から挨拶をし、それが最近シンドリアに来たユリであったから侍女たちのいい話のネタにされてしまっていたのだった。

「そうなんですか…。ですがそれはありません、だって私、ジャーファルさんに怪しまれ… すいません。まあ、ともかくそういう関係ではないので…ところでピスティさん―― 」

ユリは上手い具合に話をそらしていたが、ジャーファルにはそれどころではなかった。
「(怪しまれている…って言おうとしましたよね)」

ジャーファルさんは確かにユリを怪しんでいたが、それは最初の内だけで今は全く以ってそう思っていなかった。
まずすべきことは誤解を解くことだと考えついたジャーファルは、シンドバッドの元に相談しに行ったのだった。

――しかし、シンドバッドからの返答は言うまでも無い





(そりゃー、酒を飲んで既成事実…ゴファッ!)
(あなたに聞いた私が悪かったです)



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