小説 | ナノ





今日のユリは王宮の黒秤塔にある図書館に来ていた。理由は勿論、この世界の知識を詰め込むためである。ユリがこの世界の者でないことを知っているのはシンドバッドとジャーファルのみであり、教えてもらうのはなんか気が引けて図書館まで来たのだった。

ホグワーツの図書館ほど立派ではないものの、王宮の図書館もかなりの本がある。
とりあえずこの世界の魔法や迷宮についての本――要はユリに欠けている情報の載った本を手に取り、人気のない場所を探し腰を下ろす

最初に読み始めたのはみんながよく言っているルフとやらについてで次いで、魔法、迷宮など、どんどん知識を詰め込んでいき、一通り読み終わったところで本をパタリと閉じた。この間約2時間。ずっと同じ格好で読んでいたため肩をほぐしながら考察する。


「私も魔法使いであるのにルフが見えない…」

この本には魔法使いは生まれ持ってルフと語らう事が出来るというようなことが書いてあったがユリにはルフが見えなかった。

「私の前に姿を見せよルフたち……なんちゃって」

冗談で言ったユリだったが、その瞬間周りの空気が変わった。
そして一瞬、明るい光に目を瞑り、再び開けてみるとユリの周りに光の鳥たちが飛びまわっていた

「うそ…これがルフ?」

そう言ったユリに答えるようにゆっくりとルフ達は集まって来た。

「確かに、この量はすごいかも…」

魔法使いが見たら卒倒してしまうほどのルフを抱えているユリはここで本の内容を思い出す。それは自分自身の魔力の限界である。
マギと呼ばれる者を例外にして、全ての魔法使いは魔力に限界があり魔法をぶっ放し続けることは不可能らしい。しかしユリの世界にはそういう理念がなかった。否、あったといえばあったが、優秀であったユリにとって魔法を使うことに体力やその他もろもろの心配はなかったのだが、一つ疑問が生まれた。

「私って魔力の限界があるの?」

ほぼ全ての人があるのに自分1人無かったらそれこそチートである。丁度窓から見える中庭には人がいない。思い立ったらすぐ行動であるユリは中庭に向かった。


幸い、中庭に降りても人がいなかったので遠慮なく魔法をぶっ放そうと杖を構えて色々と呪文を唱える。
すると空には大きな氷ができユリに氷の塊が次から次へと襲いかかる。それを護りの呪文で防いだり、燃やしたり、爆破させたりするが一向にユリの魔力は限界にならない。

というのもユリのルフが異常なほどあり、次から次へと魔力を生み出し尽きることがないのに加え、魔力を生み出したルフも元に戻り再び魔力に変換する。この連鎖によりユリは事実上魔力の限界がないのだ。

そうとわかったユリは宙に浮いている氷を溶かし、雨を降らせ大きな虹を作った。
そのあと「オーキデウス(花よ)」と中庭に沢山の花を咲かせた

すると何時の間に周りから聞こえた感嘆の声と拍手。
中庭には人が来なかったものの、中庭を囲んでいる塔という塔から人が顔を出しその虹と一面の花を見ていた。


そして王であるシンドバッド、ジャーファルそしてヤムライハも驚きに満ちた顔でユリを見つめていた。

「王様…、ユリには魔力の限界がありません!わ、私、そういう方見たの初めてで!」
「ああ、やはりそのようだな」
「私、ユリのところ行ってきます!」

そう言ってヤムライハはユリの元に猛ダッシュで向かった
残った2人は

「ジャーファル、ユリは八人将と互角位の力量があるな」
「そうですね、ましてや魔力に限界がないっていったらかなりの人物です」
「ああ。奴らには絶対にユリのことがばれないようにしなければならない。知られたら必ず欲してくるはずだ」
「はい…それにあいつにも要注意ですよ。彼の中は戦いしかありませんから」


そしてそう遠くない未来にこの事が実現するとは思ってもみなかった






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