小説 | ナノ





ユリがいくらか食客として馴染んだころ、とある光景が日常茶飯事であることがわかった。


「ジャーファルさん、また王様探しですか?」
「はい、いつもいつもいなくなって…」

王様であるシンドバッドの逃走である。やる時はやる男だがやらないときはやらない。
そして今日はやらないときでありこうやってジャーファルから逃げていて、ちょうどシンドバッド探しをしているジャーファルに遭遇したのだった。
そしてユリは、そんなジャーファルを見てほっとけず、とあることを思いついた。


「あ、私位置魔法使えるんでそれで王様探しのお手伝いいたしましょうか?」

そう言うが否やジャーファルはユリの手をがしっと掴み

「そ、そんな魔法があったのですか!?おねがいします、毎度毎度あの馬鹿王に困っていたんです」

いつものジャーファルだったら申し訳ないと断っていたが今回は2徹していたためわらにもすがる思いでユリの神と呼べるような提案にのったのだ


「勿論です。ジャーファルさんのお力になれて嬉しい限りです」

そう言うとユリは杖を持ち目を瞑り魔法を唱える。そして目を開けると「ジャーファルさんこっちです!」 と、ジャーファルの手を取り、走り出した。

ユリもいつもは手を取るとかそういうことはしない性格だが、ジャーファルに未だ怪しまれているとばかり思っていたので、頼ってもらえたのが嬉しく浮かれ手を取るという後から考えるととんでもない事をしてのけたのだった。

一方ジャーファルは何故か何時もより鼓動がうるさかったが、その理由には気づくことはなかった。きっと簡単にシンドバッドが見つかる事が嬉しかったのだろうと理由をつけて……



そしてその2人……というよりユリを憎しみを持った目で見ていた者がいたことに2人とも気付かなかったのだ。後々、このことがきっかけで事件になるとはつゆ知らず



        。
       ○
       。
        。
       ○
     


「ジャーファルさん!いらっしゃいました!!」

ユリの位置魔法を頼りとし、ついて行った先には我らが王であるシンドバッドの姿。

「シン……今日という今日は…」
「おお!ジャーファル!今日は早いな〜」

ブチッ――そんな音が聞こえた気がした。
ユリはジャーファルの堪忍袋の尾が切れるのを見届け、この場を撤退しようとし、そのことに気付いたジャーファルが再度礼を言い、シンドバッドはというと

「なんだ?2人とも俺に隠しごとか?」

そこでユリはくすくす笑いながら「秘密です」と言ったのを聞いたシンドバッドは何故か心が暖かくなっていた。それほどまでユリはここに馴染んできてくれたのかと嬉しくもなっていたのだろう。そしてジャーファルをちらりと見ると彼はユリをじっと見つめていて、これはとてつもなくいい方向に進むかも知れない。そう二つの意味で思っていた。一つはジャーファルのユリへの信用。もう一つは―――…

また、ジャーファルはというと気付いた時には

「今度お礼にお茶でもどうですか?」

勝手に言葉が出ていて、あっ、と思った時には遅く弁解しようとしたら「本当ですか、楽しみにしています」とこれまたすんなりと受け入れてもらえてホッとしていた。
何故ホッとしていたのかを自分に問いながら…






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