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シンドバッドのいきなりな言葉にユリは勿論のことジャーファルも気が抜けた返事をしてしまっていた。


「すみません、何を言っているのか……」

ユリはさっきの事は何かの間違いだと思いもう一度尋ねるが返ってきた言葉はさっきとなんら変わらなかった。
理解が追い付いていないユリを見、ジャーファルも意味がわからないというように

「シン、どういうことですか部下って!ましてや今しがた知り合ったユリさんを部下におくなんて!あなたには危機感というものがないのですか」

ジャーファルはもちろん反対であった。見知らぬ人を入れるということよりも、きっとユリは強い。もしかしたらヤムライハと互角かもしれないしそれ以上の可能性も無きにしも非ず。
買いかぶりすぎかも知れないがジャーファルにとってそれほどユリの存在は危険であり要注意人物なのだ。
だからせめて――と続けようとしたジャーファルを遮り、シンドバッドは

「だってこんな魔法使いをみすみす逃すなんておかしいじゃないか!人は誰しも初めましてから始まるだろう?」
「だから私は!!」

この2人の言い合いを見たユリは、この国はしっかりしていると場にもあわず思っていた。なんでも包み込んでしまう王とそれを止め、時には叱る部下。そういうのが無かったユリにとってこの関係は羨ましいものであった。そして、この国のため、王の為に尽くせそうだとも思った。それほどシンドバッドには何か心惹かれるカリスマ性があるのだろう。

だからといって部下になるかどうかと言われたら、答えは――NOだ。
ユリは2人の方を向き言った。


「シンドバッド様、お声をかけて頂きありがとうございました。……ですが私はジャーファル様のおっしゃる通り、お二人にとって素性の知らない身でございます。そんなものが部下など私が同じ状況に置かれた場合、反対するでしょう。なので今回の件はおことわり……」

断りの返事をしようとしたユリに被せるようにシンドバッドは


「それならこれから知っていけばいいじゃないか。俺が君を欲しい訳で俺の目にはいつも狂いはない。そうだろジャーファル?」
「まあ、確かにそうですね……」
「だろ?……まあ、それでもというなら最初は食客にしよう。食と住を与えるからこの国の為に貢献してくれればいい。それで部下になりたくないなら辞めればいいさ――まあ、君は部下になってくれると思うが」

ここまで言われてしまうとユリはイエスかノーというよりも、はいかイエスしか言える状況でしかなかった。食客なら食、住の提供をしてもらえるし、調べ物にはもってこいだろう。
それに魔法使いがいるかも気になるところだ。自分の素性も問題ないだろうとトリップして来ていた事自体を大したことないように考えてジャーファルの方をちらりと見ると呆れつつも

「私は最初から食客として誘おうと思っていました」

と了承の形だったのでびっくりしつつもユリは笑顔をうかべ


「質問があるなら全てお答えします。そして力の限り国の為に貢献いたします、改めましてユリです。しばらくの間よろしくお願いします」


すんなりとこの国にとどまることとなったのだ



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