「おうっ、あんたが娘を助けてくれたのか、本当にありがとう。だからと言ってはあれだがお金はいらねえ。遠慮なく食べてくれ」
「すいません。お金が無かったので助かります、こちらこそこんな豪華な料理いただいちゃって……」
ユリはというと被害者の女性が働く飲み屋に来ていた。
「ううん。だって命の恩人だもの、これくらいはさせて?あと、今更だけどお名前聞いてもいいかしら?私はこの飲み屋の娘のジニー。敬語とかいらないわ……ってどうしたの?びっくりして」
「あ、ごめんなさい。知り合いと同じ名前だったからびっくりしただけ、私はユリ。それとここの国について色々質問してもいい?」
ユリはここの国というよりこの世界について怪しまれない程度聞き、ジニーもよくこんなんで旅に出れたわね。と半ば呆れながらも一つ一つ教えてくれた。そしてある程度の知識を身につけることが出来た。
この国はシンドリアということ、迷宮と呼ばれる建物の事、魔法使いもいること。未だにわからないことはあるが大丈夫だろうと楽観的に捉え、お金も質屋でポーチの中にある珍しいものを売れば買い取ってもらえるだろうとひとまず問題は一段落し、同い年ともあってジニーとのおしゃべりを楽しんだ。
するといきなりざわつく店内。ざわついている理由は今しがた来た2人組のことで間違いないだろうが無知なユリはジニーにあの2人はこの国の王のシンドバッドと八人将で政務官のジャーファルであることを聞き、この店のお得意様で頻繁に来てくれるがこの時間に来るのは珍しいと教えてくれた。
そしてジニーは2人の元に行き何か話している。ユリの方をしきりに見ながら……
しかしユリは気にせずにご飯を食べていた。
「そこの君、ユリさんで合っているかい?」
箸を止め、振り返ると先ほど話題になった王様――シンドバッドが話しかけてきたのだ。一国の王がわざわざどうしたのかと感じつつも失礼の無いよう答える
「はい。私がユリです」
「うん。思った通り君から特別なものを感じるな。それに若くて美人ときた」
「シン、あなた何言ってるんですか」
どこぞの古いナンパだと王様に対し失礼なことを思っていると
「ああ、すまんすまん。知ってるかもしれないが俺の名はシンドバッド。この国の王をやっている」
「はあ……」
そしてご丁寧にも横にいるジャーファルの紹介もし、いきなり爆弾発言を残した
「それでだなユリ、いきなりで何だが君の力を見越して俺の部下になって欲しいんだ」
「「……はい?…」」
そして見事なまでにユリとジャーファルの声が重なったのだった。
prev / next