シズちゃんのベット/イザシズ
静雄はベッドを探していた。
別に、静雄自身は布団でも良かったのだが、商店街の福引きで綺麗な羽毛布団の六点セットが当たったのだ。
ソレは暖かい黄色のストライプの柄で、家の毛羽立った畳の上に置くのは躊躇われたから、未だに袋から出さずに玄関脇に置いてある。アレを日光に当てて寝れば、きっと気持ちが良い。
そう思いながら、静雄はあの布団に合う…そして、自分の力と身長に似合いのベッドを探していた。
町を見回りながら家具屋や大型スーパーを見て周り、結局は気に入る物がなくて帰ってしまう。
輸入物なら丈夫そうな物があるかも知れないが、生憎とデザイナー物の様なスチールや白黒の物が多く、静雄が望むような、暖かい木目の大きなベッドというのはない。
臨也は静雄が望むベッドの特徴を聞いて、「まるで子供用のベッドだ」と笑ったので、ソコで殺しあいが始まったが、確かに臨也の言う通りで、幼児用ベッドには静雄が望むデザインのベッドが沢山あった。
休みの度にクタクタになるまで探していたが、結局又、自宅の煎餅布団に潜り込む日々だった。
ある日、臨也が静雄を自宅に呼んだ。行くと、暖かそうな木目の太い板や、ニス、ネジがあった。脇には、ベッドの作成手順を書いた紙。
「なければ作ればいいじゃない。勿論、情報料は頂くけど」
言われて、静雄は夢中で組み立て始めた。
木を切り、ニスを塗り…ネジ穴を空け…。
「出来た!」
夢中で、完成するといつの間にか夜になっていた。
「壊すより造る方が楽しかったでしょ?…さて、シズちゃんはコレをこんな所で作っちゃって…どうやって持って帰るの?ドア通らないよ?こんなデカイベッド」
言われて絶句する静雄を前に、玄関のチャイムが鳴った。
「俺は手が放せないからシズちゃんが出てよ」
そう言われてすごすごと静雄が玄関を開ければ、セルティが、あの暖かそうな色の布団セットを持って立っていた。
「さぁシズちゃん。折角、我が家に新しいダブルベッドと布団が来たし、お風呂入って一緒に寝ようか?」
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