Libera me/狼様リクエスト イザシズ

「ねぇシズちゃん。俺はシズちゃんを産めなかったんだから、シズちゃんが死ぬ時は、俺が殺すし、俺が喪主だし、俺が埋葬するね」
 何故かいきなり臨也にそう宣言された。
 曰く、生死は人生に一回しかない一大イベントなのに、出産は逃したのが気に入らない。
 じゃあ、もう片方の死は俺が貰っても良い筈だろう!という事らしい…どういう事だよ。

 「ねぇねぇシズちゃん!お葬式は何式がいい?誰を呼ぼうか!」
 「最近の棺は凄いね…ガラスの棺みたいな透明なのもあるよ!中の花とかにも拘りたいなぁ」
 「御影石…大理石…あ、標識型の墓石とかどう?俺、毎日薔薇の花束に白いタキシードで人生の墓場に入ったシズちゃんの墓参りに行くね!」

 それから、臨也は理想の葬儀についてよく話し掛けてきた。
 俺はろくに返事もしなかったり、適当に返すと、「シズちゃんの話なんだよ!大事な事なんだからちゃんと決めておこうよ!」と、怒られた。その通りだが、随分理不尽じゃねぇか?
 「俺が死ぬより先に死ねよ臨也君よぉ!」
 「じゃあ俺が死んだら喪主はシズちゃんでいいから、もっと真剣に考えて!」
 …と言われて、何でか俺までパンフを見ながら考える事になった。
 「…端から見たら、結婚前の恋人同士の会話みたいだね。息子さんの命を僕に下さいって挨拶しにいきなよ」
 と新羅は揶揄したので、デコピンをしておいた。
 「結婚式みたいに何回もあげられるのと、葬式を一緒にしないでよ!所でシズちゃん!俺と毎月結婚式あげようよ!月一回位、結婚式プレ」
 「死ねよ」


 「ただいま」
 ある日帰ると、ノミ虫が何故か俺の家に置いてあったバカデカイ棺桶のの中で寝てたから、とりあえず蹴り起こした。
 「…何だよこれ」
 「グハッ…お帰りなさいシズちゃん!俺シズちゃん詰めるならこういう棺桶が良いと思って特注して貰ったから!中が安眠用のフカフカのウレタンと、真っ赤なベロアで…釘が打ち付けられないように縁を鉄枠で…」
 「うるせぇ!…マジで作ったのかよ…つうかデケぇ。おぉ、俺の布団より寝心地良いんじゃねぇか?」
 臨也を摘まみ出し、フカフカと手触りを確かめ、寝てみる俺に臨也は笑った。
 「一緒に入れる様に特注したんだよ」
 そして、再びスルリと、寝そべる俺の横に入り抱きついて、棺を閉じた。
 真っ黒で何も見えない中で臨也の心音と温もりだけを感じて眠くなる。
 「…そういや、昔…全身骨折でショック状態入って死にかけた事がある。仮死状態だったから霊安室入れられて…その間に、自力で蘇生して生き返ったけどな…怖かった」
 俺が感傷に浸ってそう言うと、臨也はピクリと体を震わせて叫んだ。
 「…何ソレ!?死んでも生き返っちゃうって?…まぁ俺も一緒に入って見張るから良いけど…あ!土葬なら死体が残る…死体があれば生き返っちゃいそうだし、火葬?灰になったシズちゃんを誰かが持ってるなんて耐えられない…地球にばら蒔かれて一つになるなんて!あぁ、シズちゃんを跡形もなく消さなきゃ!消さなきゃな…塩酸、マグマ、海溝…」
 ブツブツと又忙しなく呟き始めたコイツに、俺は苦笑して眠ろうとする。
 何せこの中は酷く気持ちが良いし、何か良い匂いだし、静かだし暗くて落ち着く。
 良い寝床だ。今日からここで寝よう。
 寝息をたてる俺に臨也はおやすみ、と少し笑った様だった。


 

終わり


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