パラパラとページを捲りながら流し読みをする、一息吐いてパタンと閉じた雑誌の表紙にはずいぶんと見慣れた人がいた。こうして見ると男前だなあなんてまじまじと眺めていると私の名前を呼ぶ声がして顔を上げる。その先でお待たせと手を振る彼は流し目でドキッとさせる雑誌とは違う、人懐っこい笑顔を見せた。
太陽に負けないくらいの髪と笑顔を持ち合わせた人なんてきっとそうそういない。

「涼太、」
「お待たせ、帰ろっか」

同じように手を振り返すとその手が下りたと同時のタイミング、私の手を彼の手がさらう。イケメンくんはこんなことでも絵になるから嫌だ、こっちの心臓がもたないじゃないか。

「遅くなってごめんっス」
「いいよ、明日は青峰くんとこと試合だもんね」
「…うん。ようやく、」

ひゅっと。音を立てて涼太が息を吸う。真っ暗な夜空の中でもその瞳は色褪せない、どこにいたってその色を見つけてみせるしだから私はきっとずっと彼を見失わないでいられる。
涼太は変わった、中学の頃とは比べ物にならないほど明るくなったし毎日を楽しそうに過ごしてる。バスケを好きになったあの頃も楽しそうだったけど、きっと今の方がもっと楽しんでる。それはきっと笠松先輩とかバスケ部の人たちのおかげだし、黒子くんたちのおかげでもあるんだろう。
自分が夢中になれるものをようやく見つけた涼太はすごくきらきらしてる。それこそ雑誌の表紙に載せたらきっと女の子はみんなかわいい悲鳴をあげちゃうぐらいに、だけどそれじゃ私が嫌だから雑誌の涼太はまだかっこつけた男の子になっててもらおうかな。

「涼太、応援してるよ」
「ありがと、俺かっこいいから惚れ直しちゃうっスよ」
「はいはい期待してますよ」
「ちょ、彼氏に向かってその反応ってどうなんスか!?」

ぎゃーぎゃー騒ぐ涼太と繋いだ手に力を込めてにっこりと目を合わせる。うぐ、と途端に息を詰まらせるからなんだかかわいい。かわいくてかっこいいなんて反則だろう、緩む頬を少し押さえるとどうしたのと首を傾げられた。こんなところも愛しいなんてもう末期症状じゃないか、困ったなあ。

「これ以上惚れさせてどうする気かな」
「ん?何か言ったっスか?」
「…涼太は犬みたいだねって話だよ」
「な!」

幸せです、太陽みたいな涼太がそばにいるんだもん、見えない明日でも不安なんてないよ。





―――
「未来なんて見えないけれど、こうしてふたり手を繋いでいればどんな明日だって平気だと、そう思っていたあの頃」

桐皇戦前日のお話。
単行本買ったら黄瀬くんがかっこよかったわけです。

title 恋人
11/01/16

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