薄黄色の皮に包まれた甘い真っ白な生クリーム、彼が本日トッピングにチョイスしたのははみ出しそうなぐらい贅沢なチョコのかかったバナナらしい。
甘ったるそうと少し顔をしかめる私と美味しそうに食べるユーリはもしかしたらお互い性別を間違えたのかしらって思ってしまった。

「…幸せそうに食べるね」
「ん、欲しいのか?」

食べるか?と首を傾げるユーリの手にはそれはそれは甘そうなクレープ。いらないと首を横に振ることで示すと彼は一言そっかとだけ言ってそれを食べ続ける。

「ユーリが甘いもの好きだなんて意外」
「そーか?」
「うん」

年齢に比べて落ち着きのある彼にしては珍しく子どもみたいにキラキラした瞳、まあそれでもカロルやおっさん(あの人は年齢問わず子どもだ)に比べたらはしゃいではいないけど。普段と比べたら随分無邪気に見える表情や気付かれずに口の端についた生クリームが夢中になってることを物語っていた。
普段見れない子どもっぽい表情がかわいくて思わず頬が緩む。恋人に対する愛しい、よりも子どもに対する可愛いと思う感情かなあ、これ。

「ユーリ、クリームついてる」
「ん?」

子どもができたらこんな感じかなぁなんてちょっと年を取った感覚を覚えてユーリの顔に手を伸ばす。口の端についたクリームを指で拭ってあげてぺろりと舐めてみるとやっぱり甘かった。

「なんかユーリ子どもみたい」
「……」
「ユーリ?」

フフッと笑い声を零してユーリを見上げる。何故か固まった彼の手からチョコが溢れそうで慌ててティッシュを取り出そうとすると漸く頭上から声がした。

「今日はずいぶん大胆だな」
「へ、」

チュ、と。音を立てて唇に触れたものが何かわからないほど私はバカな恋人じゃない。目を閉じる間もなく近付いたユーリに驚いてると細く目を開けた彼と視線が合う。それが無性に恥ずかしくて思い切り目を閉じると甘い匂いがふわりと掠めた。

「…甘いな」

唇が離れて彼が私の名前を呼ぶ声がする。そりゃアンタがクレープ食べてたんだから甘いでしょうよと口を挟む余裕もなく恥ずかしくって下を向いてしまった。

「ユー、っ」

さっきとは一転して恋人らしい空気になってしまったのが恥ずかしくて耐え難い。どうにかしてこの空気をなくそうと名前を呼ぼうとした、けれど続けたかったはずの言葉が私の息に呑まれて喉から止まる。
さっき私が彼に触れた位置と同じ唇の横、口の端にユーリの舌が触れたから。言葉が出ないでただ熱だけが頬にあがると、もう一度軽く唇が触れて満足そうにユーリが笑った。

「クリームついてたから」

その笑顔はとてもじゃないけどさっきの子どもらしいものじゃなくて。真っ赤になった私をニヤリと見つめる彼に前言撤回を叫びたくなった。
まだ片手にクレープ持ってるくせに、その笑みは大人っぽくてひどく不釣り合いだ。







―――
「くちびるにシュガー」

クレープ食べてたら思い付いた。本当はユーリが一口あげるって流れになるはずだったのに思いの外幸せそうに食べる姿が想像できてこうなった。
さっちゃんこんなんになっちゃってごめんね!´`

title 幸福
10/08/14

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