野宿って久しぶりだなあ、ぽつりと呟いて夜空を見上げる。パチパチと燃える火の近くに座るヒューバートを見て、思わず声をかけた。

「ヒューバート」
「どうしました?」
「こっちの台詞。寝ないの?」
「見張りですよ」

今日は兄さんも教官も疲れているようだったので。
眼鏡を押し上げた視線の先の二人を見てああと納得した。確かに昼間の戦闘でたくさん頑張ってくれたし疲れてるんだろうなあ。それなのに口に出すこともしないで女性陣をテントに押し込むんだから全く優しいというかバカというか。
いつもお疲れ様と毛布代わりのマントをかけ直しても身動ぎもしない二人に苦笑してヒューバートの隣に座る、ぱちりと瞬きをしたのがわかった。

「寝ないんですか?」
「ヒューバートが寝なよ、見張り代わるから」
「遠慮します、あなたはどうせ寝てしまいそうなので」
「何それ!」

信用ない!と怒るフリをするとヒューバートが口元を緩めて笑ったので思わずぽかんと口が開いてしまった。彼は、こんなに穏やかに笑う人だっただろうか。

「…どうしました?」
「っ何でもない!」

夜で良かった、とてもじゃないけど今の顔は見せられない。ぼんやりと火を眺める横顔を盗み見るとその瞳がこちらに気付いた。赤い火に照らされても曇ることのない青の瞳、きれいだと素直に思った。

「眠いなら素直に寝てください」
「やだ」
「………ハァ」

呆れた、と。口に出さなくてもわかる心の声にふふふと笑ってみせる。この旅で私の頑固さは重々理解した彼は私を帰すことを諦めゆっくりと息を吐いた。

「…明日眠いとごねないでくださいよ」
「ねぇヒューバート。今日は月がきれいだよ」
「…人の話を聞いてください」

文句を言いながらも夜空を見上げるヒューバートにひとつ笑う。またもやその瞳を眺めてみると今度は青い月を映していた。
神秘的と言えばいいのだろうか。アスベルだって同じ色を宿してるはずなのにどうしてだろう、この人が見る世界を知りたいと思った。

「(…すきだなあ)」
「?何か言いましたか?」
「何でもなーい」






―――
「星の消えた夜のこと」

多分教官は起きてる。
アスベルは寝てる(笑)
着地点がわからないのはいつものこと。

title 幸福
11/07/01

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