「いただきまーす!」

栄口家でご飯を食べるとその日あったことを報告するのがいつの間にか恒例になってた。みんなのお話を順番に聞いてって頷いたり笑ったりするこの時間は私も一緒の家族みたいで、それがなんだか楽しくて大好きだった。
今日の私のお話は私と勇人と中学が一緒だったユカちゃんが高校も一緒だったこと、クラスが一緒になって話しかけてくれて嬉しかったこと。
勇人のお話は春休みから行ってる野球部に不思議なピッチャーが来たこと、阿部くんが楽しそうにしていたこと。

「あとゴールデンウィークは合宿だって」
「へぇぇ、忙しいねぇ」
「なー、まあ面白そうだけど」

お味噌汁を飲みながら勇人が笑う、同じようにお味噌汁を飲んだ弟くんがおいしいと笑う。おいしいと言ってくれた弟くんにありがとうと私も笑う。
栄口家には春がよく似合うなあ、ぼんやりとそんなことを考えながら豚肉のしょうが焼きに手を伸ばした。

「西浦は野球部新設だって言ってたよね」
「うん、だから10人」
「10人!」

思わず少ない!と言ってしまって勇人もだよなあと苦笑いする、弟くんも同じようにポカンと口を開けてびっくりしてた。

「10人…10人かあ」
「マネジもまだいないからなあ、もうちょっと欲しいよな」
「そうだよね、でもいいなあ」
「何が?」
「勇人楽しそう」

驚いたように目を丸くする勇人にあれ?と首を傾げる。「そっか」ぽつりと呟いた言葉にうん?と返事をしながらまた首を傾げてみせると勇人がくしゃりと笑った。

「楽しーかも」

そう笑った勇人の目が細くなる笑顔は本物で、私もつられて笑う。また勇人が野球をやるんだなあと思うとなんだか嬉しくって頬が緩んだ。
ごちそうさまでしたと手を合わせればおいしかったと言ってくれたふたりにお礼を言う。部活もいいけど、私にはこうしてご飯を作る方が好きだなあ。

アサリのお味噌汁からは春の匂いがした。









―――

合宿前。
多分ずっとこんな感じです。

11/05/19





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