夜中に出歩くなんて初めてだよねって笑うとにひひと歯を見せて笑う愛しい人。
寒いでしょって無理矢理巻かせた私のマフラーの隙間から彼の吐息がこぼれる、私の吐息は真っ直ぐ夜空に溶けていく。肌に触れる空気が寒くたってさみしいと思わないのは、今年も隣に彼がいると信じてるから。
ふふ、と笑みをこぼしながら隣を見ると真っ直ぐ大きな瞳がこっちを見ていた。

「寒い?」
「ん、だいじょぶ」
「…やっぱマフラー返す!」
「え、やだ!」
「なんで!」
「田島が風邪ひくのやだ」
「オレはお前が風邪ひくのがヤダ!」

あわわ、男前だ。こんな時だけかっこいい顔しちゃって断れなくさせるの、ずるいなあ。巻いたマフラーをお返しされて首があったかくなるのと田島が笑うのが同時、ほっぺが赤くなるのも同時だった。
満足そうに彼が笑う、すごくかっこいい。手を繋ぐのだってたくさんの女の子にしたことあるのって聞きたくなるくらい自然で、だけどこれが彼の魅力なんだろうな。

「田島は初詣、何お願いするの?」
「んーあんま考えてねぇな」
「甲子園は?」
「それはカミサマに願うんじゃなくて自分で叶えるから、ゲンミツに!」

ふーんって平気な顔して頷いてみる、内心は田島のかっこよさに緩む頬を堪えるのに必死だけどこんなの言えないし田島はきっと気にしない。隣でジャガバター食いたいとぼやく田島はかっこつけないからかっこいいのだ。

「私おでんがいい」
「お、じゃあ先に屋台行こーぜ!」
「えーお参りは?」
「後にしても大丈夫だって!オレ腹減った!」

初詣目的に神社に来たのに先に屋台行っちゃうなんて私たちだけじゃないかな、ぼんやりと思いながらしょうがないって苦笑いして歩く先を方向転換する。
今年のお願いは明日もずっとその先も田島といられますように、にしようと思ってたけどやっぱりやめよう。「そんなの自分で頑張れ」って神様にも田島にも言われちゃうと思うから。
寂しがりやのウサギじゃ彼のそばにいられない、いやきっと田島はそれでもそばにいてくれるけど。私が寂しいって泣く度安心するまで頭を撫でて笑ってくれるだろうけど、それじゃ私が嫌なんだ。
彼の後ろで泣いてるだけなんて真っ平ごめんだ。隣に胸を張って立ってたいし時には田島を追い越してやる。
私が田島をかっこいいと思うように、彼にも私のことをずっと惚れさせてみせるよ、ずっと隣にいたいって思わせてやるんだ。
思いよ届け、念じながら握った手はじんわりとあったかい。

「田島、」
「なにー?」
「今年もよろしくね」
「おう!よろしくな!」

ジャガバターもおでんも頬張った田島はさながら頬いっぱいに幸せを詰めたハムスター、ウサギになりきれない私もその幸せを分けてもらって頬いっぱいに詰めようかな。








―――
依存だけじゃない背中合わせの関係ってすごく好き。
あけましておめでとうございますってことで。
今年もよろしくお願いします(^^)

title mm
11/1/2
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