護ってあげます、だから。







「左近!左近は何処だ!!」

「おやおや、どうしたんでしょう」


がなる、というよりは叫ぶように私を呼ぶ三成さんの声。
すっかり日常になっていることにちょっと笑いながら、呼ばれるままそちらへ向かう。
今日はいい天気ですねえ、ひなたぼっこでもしたいところです。


「呼びました?三成さん」

「呼びました、ではない!私が呼んだら直ぐに来い、でなければ斬滅する」

「はは、左近に無茶をおっしゃいますねえ」


善処しますよ。と笑ってみせれば、善処ではなくやれ、と不機嫌顔で命をいただいた。
この会話の中で、周りが青ざめているのは言うまでもない。そして、それさえも日常で。


「それで、ご用件は何でしょう?」

「何故そうなる」

「三成さんは左近を呼んだんですから、左近に用があると思うのは当たり前じゃありません?」


にこ、と笑ってみせると、三成さんはこちらをじっと見据えて固まった。はて、何かありましたかねえ?
首を傾げる私に、三成さんは小さく鼻を鳴らして、ぷいとそっぽを向いた。
参りましたねえ、機嫌を損ねてしまった様です。


「……用も無く、」

「はい?」

「用も無く貴様を呼んでは悪いのかと言っている!!」


こちらを見ずに言い捨てた三成さんの姿に、思わず呆けた。
それはゆっくりと思考に染み込んでは、愛しさが込み上げて来る。
―――ああ、このお方は。


「悪くなどありませんよ、三成さん。では…鍛練でも如何です?」

「ふん、いいだろう。手加減などしたら斬滅する」

「はは、三成さん相手に手加減など出来ませんよ。左近はそこまで武に長けてませんから」


笑えば、三成さんはさっさと鍛練場へ足を進めていく。
それを後ろから追い掛けて、ひっそりと衷心を新たにした。







護ってあげます、だから。
(どうかそんなお顔をされないで)
(約束も、命令も、その命も全部)
(試す真似も、全てお望み通りに)
(左近は何処にも行きませんよ)



110515
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