常に前を歩いて――進行。









結局、漫喫で日を越した次の日。
コンビニで適当にパンを買ってから、時間を見計らってドアにパスを翳した。
虹色の空と不変の砂漠。滑るように止まったデンライナーの、乗降口をくぐる。
食堂車に入る前に、軽く両頬を叩いた。
―――うし、問題ねえ。


「おはよーさん」

「彰太郎!」


入った瞬間に飛びついてきたリュウタロスを難無く受け止める。
……結構な衝撃だったけどな。イマジン体って硬いの忘れてたよ…。
あやすように撫でてから、ナオミに珈琲を頼む。


「彰太郎、らしくなったね。解決したの?」

「まあな。俺が元気なくて寂しかったろ?」


にい、と笑ってやれば、勝てないなあ、とウラタロスが両手をひらひらと振った。
けっ、そーゆーの様になるからムカつく。
八つ当たりだって?知ってるようるせーな。


「てなわけで、手伝えイマジンズ」

「何がどう手伝え言うてんのかさっぱりわからんで、彰太郎」


キンタロスのツッコミには取り敢えず笑っておく。
ちょっとした茶目っ気だって。ノってくれたっていーじゃんかよー。
ナオミから珈琲を受け取って、それで喉を潤す。
それから、近いテーブルの上に座った。


「取り戻さなきゃなんねえモンがあんだ。……俺ケンカ強くねえし、だから手伝え」


笑ってそういえば、お安いご用や!と豪快に笑われた。
嫌な感じは全くしない。寧ろありがたいくらい。
飲み干して空になったカップを置いたとき、スライドして開いたドア。
その奥の影は俺を見て、気まずそうに表情を曇らせた。


「おはよーさん、ハナ」

「…うん、おはよう。あのさ、彰太郎……」


言い淀むハナの唇に、指を当てる。
あ、やべぇ押しすぎた。痛かったかな、まあいっか。
きょとんとするハナにはにんまり笑いかけて、指を離した。


「サンキュ、ハナ。俺は取り戻しに行くよ。良太郎も、俺自身も」

「―――そっか。私も手伝うわ!」

「おう、頼むぜ」


和やかな、だが確固たる決意。
イイ雰囲気だったのに寝坊してきたモモタロスのせいでそれはぶち壊されて。
礼も兼ねてデコピンしてやったら拗ねられた。
これこそ、デンライナーだけどな。











常に前を歩いて――進行。
(道が無くとも進み行け)




110401
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