終止符のように――終焉。 軽く降り立ったのは、良太郎の生まれた日。 特に変わったような雰囲気は無かったが、"変わり無いこと"が違和感に繋がっていた。 なんだか背筋がざわりと気持ち悪い。間違っても俺、風邪なんかひいてねえし。 「どうだモモタロス、居るか?」 「(……今のところは感じねえな)」 「そっか。わかったら即言えよ」 脳内に響く肯定を聞いて、辺りを歩いてみる。 ぼんやりと覚えてる景色。つっても、デジャヴュ程度だけどな。 近くにあった公園のベンチに座る。 午後だからか、この寒い中に遊んでる子供は多い。 不意に、とん、と足に感じた衝撃。転がるのは、サッカーボール。 「すいませーん、蹴ってくださーい!」 その言葉に応じて、ボールを蹴った。 うまくキャッチしたその男の子は、笑って、弟らしい子の方へ走って行く。 ……昔、俺と良太郎もよく一緒に遊んだっけ。最近、そんなこと忘れてた。 「(彰太郎!来たぜ、右だ!)」 「はいよ。ったく、イマジンの野郎KYだな…人が思い出に浸ってるってのに」 モモタロスの声でブチ切られた思考は放り捨てて、言われるままに走り続ける。 道なんか分からなくなるくらい、ただがむしゃらに。 何個目かの角を曲がったとき、漸く見えたイマジンの姿。 走りながら、ベルトを付けた。 「モモタロス!」 「(おう、任せろ!)」 「―――変身!」 離れていく感覚には、何時までたっても慣れそうにない。 何処か間接的な視界に、見知ったイマジンの姿が映る。 あの時、希望ヶ丘で俺に仕掛けてきたイマジン。 痛いくらいの金属音が、脳内で反響する。 「腰抜け電王が…死に花でも咲かせに来たか!」 「テメェを倒しに来たんだよ!俺は最初っからクライマックスだ!!」 俺に憑依したモモタロスが、巧みに――っつってもほぼ力押しだけど――イマジンを追い詰めていく。 何時も遠くから眺めてた景色が目の前にある事は、まるで夢うつつのようで。 だからかも知れない。 「馬鹿野郎、彰太郎、こっち集中しろ!」 「―――もらったァ!!」 モモタロスが俺に言葉を向けた瞬間、綺麗に攻撃を決められた。 衝撃で吹っ飛ぶ身体。ぐん、と一気に鮮明になる感覚と、激痛で視界が歪む。 「…っ、が……!」 「ふん、口ほどにもないな、電王……己の無力さを恨むがいい!!」 目の前で振り上げられる武器。脳内で、イマジンズの声が遠く聞こえる。 畜生、動け…!負けるわけにはいかねえんだ、死ぬ訳にはいかねえんだ! それでも、激痛に苛む身体は意志に反して動かない。 スローモーションの様な光景を、怖いはずなのに、ただじっと見据える。 終止符のように――終焉。 (焉れ終わる、摂理と分かっていても) 110511 |