自分の小ささに苦笑いするけれど。 自然に目が覚めた。 むあ、と欠伸をしながら外を見ると、ちょうど日が昇り始めているところだった。よし、今日もばっちり。オハヨーゴザイマース。 結局、昨日は情報を聞けなかった。まあ、夜遅くに来た俺も悪いけどさー……。昼夜逆転はしてないけど、夜もクエスト行くし、あんまり気にしてなかったですサーセン。 どちらかと言えば問題なのはそこからで、野宿するっつったら、ジョナとジョースケに全力で止められた。んでもって、部屋に押し込まれた。どんだけ広いんですかこの家は……!!五人で住んでて空き部屋あるとか!! とりあえず、昨日さんざ話をしていた大きい部屋に行くと、すでにジョースケが起きてた。早いねジョースケ。 「おはよジョースケ。早起きだねー」 「はよっス!今日俺が食事当番なんスよ」 「当番制なのか何それスゴい。あ、手伝うことあったら是非ともやらせて俺暇すぎて死ねる」 「ありがたいっスけど……じゃあなんでこんな早く起きたんスか」 いや癖で、と返すと、老人っすかアンタ、と苦笑いされた。一応俺二十代なんだけど。ジョースケよりは、そりゃあ老けてるけどさ、それってあんまりじゃあ……。 ジョースケの手伝いをしながら、そういえば、と口を開く。 「ねえジョースケ、見たっていうモンスターどんなんだった?」 「どんなんって言われても……それに、モンスターって決まった訳じゃねえし」 そりゃそーだ。意外とジョースケは冷静らしい。 けど、仮にそれがモンスターだった場合、普通の人間には間違いなく何もできないだろう。ジョースケ達がスタンド、と呼ぶ何かの"能力"があったとしても、討伐するには骨が折れるだろうし。実際、ジョースケ達は昨日、ガノトトスを見て困惑し、殆ど動けないでいた。いや、俺が動くなって言ったんだけども。 「んー、でも教えて欲しいんだよねえ。モンスターじゃないって決まった訳でもないし。特徴を聞けば、だいたい予測がつくしねー」 「それもそうだなァ。って、アルバ!コンロの火ィ止めくれよ!!煮立ってる!」 「コンロってこれ?この火消せばオケ?水ぶっかけていい感じ?」 「ちげーよッ!!コンロも使えないってアンタどーゆー生活してたんスか?!」 自給自足ですけど何か。生肉ならウルトラ上手に焼けるよ! ツマミ回して!とまくし立てられて、その通りにしたら火が消えた。何これスゴい。文明の利器ってやつですか。 ジョースケにどうなってるのか聞こうとしたら、アンタはもう座ってろ、と一蹴されました、まる。ごめんね役立たずで。 * ジョースケの作ったご飯をみんなで食べて、そのうち、ジョナ以外はどこかに行ってしまった。なんでも、学校ってところで勉強をするらしい。真面目だねえ。 情報を聞けないんじゃ、動くこともできない。どうしようかなあと思ってるところで、ジョナから声がかかった。 「なあにー」 「僕も少し出掛けるんだけど、アルバも一緒に来てくれるかい?」 「オケ把握した」 ジョナの背中についていく。ジョナといいジョセといい、本当にガタイいいよなあ。俺より背もあるし、ムキムキだし。……べっ、別に泣いてなんかないんだかんね!目から汗が出てるだけだかんね!! ジョナについていった先は、これまた大きい屋敷だった。何これすごい。俺には住めないわ、こんなの落ち着かない。 ジョナは勝手を知ってるんだろう、迷うことなく奥へ奥へと進んでいく。なんか会う人会う人に頭下げられてるんだけど、どーゆーことなのこれは。 「ディオ、入るよ」 ジョナはそう一声かけて、ドアを開けた。中には、これまたイケメン金髪な男の人がいました。もうやだ俺の周りの顔面偏差値高すぎる泣きたい。 ディオと呼ばれた男は、ジョナに視線を向けてから、俺を睨みつけた。わあ、凄い綺麗な赤い眼ですね怖いから勘弁して。あれだ、承りと同じ感じだわ。ガクブルしちゃう。 「ジョジョォ……私は確かに、貴様が来るとは聞いていた。だが、隣のアホ面の男はなんだ?」 「えっアホ面って俺?俺だよね?何こいつちょっとムカッとした。ねえジョナ、このイケメン殴っていい?」 「うん、ダメだよ。ディオは終始こんな感じだから諦めた方が良いと思う」 すっぱり拒否られましたありがとうございます。俺の怒りはどこにぶつければ……!! 悶々としているうちに、話は進んでいたらしい。さっぱりわからないヨー。でもジョナは、人を迎えにきたらしい。 「……おい、そこのアホ面。名くらい名乗ったらどうだ」 「えー……アホ面いう奴に名乗りたくないんだけど俺ェ……」 そういった瞬間、入ってきたのとは違うドアの外から、大きな物音が聞こえた。何かが、そうだ、"人くらいの重さの何か"が、倒れたような音だ。 それを理解した瞬間、反射的に身体が動いていた。ジョナの声が聞こえた気がするけど、ごめん分かんないや。無視してるんじゃないから許してね! ドアの先は外だった。そこにいたのは、なんだか焦り顔の帽子を被ったオニーサンと、倒れてる星柄ズボンのオニーサン。そして、その前には、鋭い牙をむき出しにした、"モンスターのような"何かが、いた。 ―――ああ、そうだ。狩らなきゃ。狩られる前に。 「《暴風槌【裏常闇】》!!」 ナルガ種のハンマーを構えて、モンスター?に突っ込む。驚いてるオニーサン達は全力スルーで。ごめんね、後で話すから。ちゃんと助けるから。 「吹っ飛べ――――――ッ!!」 抜刀と同時にためてた力を一気に解放する。カキィン!!って良い音したし、たぶん頭にヒットしたんだと思う。やったね俺!ハンマーはリーチが短いから苦手だよ! モンスター?は、かなり良い感じに吹っ飛んでくれました。まるでジャギィのようだ。 べしゃあっ!と地面に落下したのを確認して、動かないね。よしオケ。ハンマーは納刀しておけばいいよね。 さっき倒れてたオニーサンに近づいて、目線をあわせる為にしゃがみ込む。ぺたんって座ったままだけど、あれかな、腰でも抜けちゃったのかな。 「オニーサンだいじょぶ?怪我してない?」 「え、あ……うん、怪我はないけど」 「おたく、容赦なく吹っ飛ばしたね……ディエゴのやつ、生きてんのか……?」 倒れてたオニーサンは大丈夫っと。よかったよかった。帽子を被ってるもう一人のオニーサンは、ひきつった顔でモンスター?の落下した方を見ていた。なあに、あれディエゴっていう種なの?聞いたことないや。 そういえば、と屋敷の方に視線を寄越すと、ジョナと金髪のオニーサンがこっちに走ってくるのが見えた。わあ、なんかすごくいやな予感がするよ! 「何をするか貴様ァ――――――ッ!!」 「痛って!何すんのさオニーサン!俺の心折りにきたの?!大丈夫だよ俺チキンハートだからもう折れてるよ!!」 「いっそ折れて死ね!!」 「ディオ、落ち着きなよ……アルバ、君もやりすぎ」 はーい黙りますごめんなさいジョナ。 金髪のオニーサンに殴られた頭を押さえながら視線を泳がせてると、さっきモンスター?を吹っ飛ばした場所あたりから、むくりと人間が起きあがった。 「うええええええ?!ど、どうしようどうしよう俺人間にモンスター?ぶつけちゃった感じ?!ごめんなさいマジサーセンっした!!」 「…………俺はお前に吹っ飛ばされたんだけど」 「え?」 前からの声に素っ頓狂な返事をする。目の前にはこれまたイケメンなオニーサン。帽子にDioってあるんだけど何それ君の名前?あれ、金髪のオニーサンもディオって呼ばれてなかったっけ?あるぇ? 「アルバ、その子はディエゴ・ブランドー。スタンド能力で恐竜になれるんだよ」 「ねえジョナ、スタンドってあれだよね、承り達の後ろにいる人たちみたいなのだよね。へー、こういうタイプもいるのかー。いやあゴメンよディエゴ?くん?俺ってば早とちりでモンスターと間違えちったテヘペロ。あ、俺はアルバっていーます」 最悪な第一印象取り戻そうぜ!なノリで自己紹介したらどん引きされましたなーんでー。 ディエゴ君はひきつった表情のまま、ろくな反応もない。でもねえ、あの状況じゃ身体が勝手に動くって。ハンターの性ですよもはや。 そんなこと思ってたら、星柄ズボンのオニーサンがくいくいと俺の装備の裾を引っ張ってた。 「僕の安寧を守ってくれてありがとうアルバ。僕はジョニィ・ジョースター。これからもどんどんディエゴ殴ってもらって構わないから」 「おいジョニィ、ディエゴ泣いてるぞ」 「知らないよ。気になるなら君がフォローしたらどうだい、ジャイロ。僕は絶対にゴメンだね」 ジョニィ、君はあれだね、かわいい顔してババンバ……ゴメン黙るわ。俺空気読めてない。サーセン。 帽子のオニーサンもディエゴ君をフォローする気はないらしく、俺の方を向いた。 「ジャイロ・ツェペリだ。おたく、見かけによらずやるね」 「見かけによらずってどの辺りよ。アルバっていーますハンターですイェイ」 「だからと言ってディエゴを吹っ飛ばす理由にはならんぞ貴様ァーッ!!」 かみつくように叫ぶ金髪のオニーサン……ええと、なんだっけ?ゲオだっけ?面倒だからそれでいいよね。ゲオ。 ジョナやディエゴ君、ジョニィもジョーロ……あれ、ジョイロ?まあいいや、みんなそろって俺を見据えてた。 それに思わず、きょとんとしてしまう。何でそんな簡単なことを、わざわざ聞くんだろう。 「なんで?」 「なんで、って……」 「俺はハンター、狩人だよ?狩られる前に狩る、当たり前でしょ?」 俺にとって当たり前の常識を、当たり前に口にしただけ。 なのに、ジョナ達は全員、信じられない、といった眼で俺を見据えていた。 ……ああ、その眼を見たのは、いつの話だったっけ。 自分の小ささに苦笑いするけれど。 (でも軽率だったかな……覚えてたら気をつけよ) 130602 |