世界の中心は何処ですか? 「おはよージョナー」 「おはよう、アルバ」 むあ、と欠伸しながら挨拶しても、ジョナはにこやかに挨拶してくれた。やっぱりジョナってば良く出来た人だよなあ。見習えって?ちょっと無理かな! 朝ご飯をもらって、ぐっと大きく伸びをした。さあ、今日はやることがたくさんある、さっさと行動しなきゃあね。 「ねえジョナ、今日俺出かけていい?」 「いいけど、どうかしたのかい?」 「みんなに挨拶してくるよ!流石に、俺もそろそろ戻らなきゃだしねえ」 笑ってそういえば、ジョナはそうだね、と少し寂しそうに笑った。俺がいたってうるさいだけだと思うんだけどねー。自覚あるなら直せって?面倒だから却下。 じゃあ行ってきます!と声をかけて、外に出た。雲一つない快晴、うん、今日もいい天気だ! * 「あっ見つけた!おーいネエロー!兄貴ィー!!」 「……アルバか。朝から元気だな」 「朝っぱらからうるせーぞ」 わあ、二人とも超不機嫌顔!ネエロはどちらかってーと疲れてるみたいだけど。御愁傷様です。 走って二人に近付いて、そろそろ帰るから挨拶しに来たよ、と伝える。 「おーそうかい。静かになって助かるぜ」 「兄貴ってば辛辣!!でもまあ、一理あるかも……うん」 「認めるのか否定するのかどちらかにしたらどうだ」 「ええー?いいじゃんグレーゾーンってやつだよ!セウト!」 けたけたと笑ってみせると、ネエロは深く溜息をついた。えっ俺のせい?俺のせいなの?まあいっか。 そう言う事だから!と話を切り上げて、二人に別れの挨拶を。何かあったら呼んでね!格安で引き受けちゃうよ! そのままフラフラしてたら、テーブルがある場所……えーと、カフェだっけ?に、変なの付けてるオニーサンと、その前に飲み物を置くサラダさんが居た。やったねナイスタイミング! 「オニーサンとサラダさんやっほー。そろそろ帰るから挨拶しに来たんだけど、……仕事中?」 「俺をサラダさんと呼ぶな!仕事というよりは手伝いだ」 「あらそー。なんか様になってるねえ」 そう言ったら、サラダさんは何も出さないからなと言い切った。いや別に、俺何か欲しいとか言ってないんだけど、俺そんなに何か欲しがってるように見えるの?どういうことなの馬鹿なの死ぬの? 軽く否定してから、オニーサンのほうに向き直る。 「お前に帰る場所があるのか」 「何それ酷い。一応あるんだからね!」 「へえ」 アッすごく興味なさそう。じゃあ何で聞いたのよ。てかオニーサン俺の方見すらしないんだけど。ずっと何か書いてる。いや、字っぽくないし描いてるのかな? もういいや、次行こう……と思って後ろ向いたら、何かがぽすんと当たった。 「何さオニーサン」 「やるよ」 「……これ、俺?へえ、すごい!オニーサン上手だね!」 オニーサンがくれたのは一枚の紙で、それには俺が武器を構えている姿が書かれていた。すっごく上手!特徴めっちゃ捉えてると思う!でも欲を言えば、俺じゃあ無くてモンスター描いてほしかったなあ。出来ればジンオウガ。いや、オニーサン多分ジンオウガ知らないだろうけど。 ありがとう、またねー!と挨拶して、サラダさんとオニーサンに背を向けた。 次に向かったのは海。確か、カキョインと姉御に会ったのそこだったもんね!……かと思ってたら、向かう途中でカキョインにばったり遭遇。俺を見つけると、穏やかに微笑んで、やあ、と挨拶してくれた。 「やっほーカキョイン!今日は一人?」 「うん、ちょっと買い物に。アルバはどうしたんだい?」 「そろそろ戻るから、挨拶しとかなきゃと思って」 そのままの言葉を伝えたら、カキョインはそっか、と眉を下げて笑った。あ、なんか一番お別れって感じするね。え?俺だけ?サーセンっした。 またね、と手を振ったら、カキョインは俺の名前を呼ぶ。エッなに、何かおかしかった? 「アルバは、あんな風に命を狙われても戻るのかい?」 「戻るよ。俺が生きる場所はあそこにしかない。俺は狩り場に生きて狩り場に死ぬ。戻る以外の選択肢がないんだよ」 「……そっか、なら仕方ないね」 カキョインはやっぱり眉を下げて、諦めたように笑った。心配してくれて嬉しいし、なにより、俺の世界観を否定しないのがありがたかった。あの連中は、聞きもせずに否定から入ってたから。別にいいけど。 湿っぽいのは好きじゃないし、じゃあね、と軽く言ってカキョインと別れる。本当は全員に挨拶するべきなんだろうけど、もうそろそろ、時間だ。 ジョナ達の家に戻って、荷物を背負う。大したものを持ってるわけじゃあないし、忘れ物をしても、大した問題にはならないだろう。いや、それを処分するって意味では問題かもしれないけど。主にジョナ達が。 ポーチの中身を確認して、それから、笠の紐をしっかり縛る。さあ、戻ろう。俺の世界に。俺が 「アルバ」 ドアを開けるその瞬間、背後から声をかけられた。振り向かなくたって分かる、ジョナだ。なあにー、と間延びした声で答えると、そのまま、ジョナは言葉を紡ぐ。 「―――今度は、遊びにきておくれよ」 「はは、物好きめ!ありがと、うん、暇が出来たら。……それじゃ、俺、行くよ。みんなにヨロシクね、ジョナサン・ジョースター」 返事があったのか、なかったのか、俺には分からない。無機質に閉まった扉は、あったであろう声をかき消した。それでいい。後腐れ無くて、結構なことじゃあないか。 笠越しに空を仰ぐ。まだ日は高く、蒼穹はどこまでも遠かった。何処に行っても変わらないものなのだ。雄大で過酷な自然というのは、そういうヤツなのだ。 ひっそりと笑って、足を進めた。さあ、一狩り行きますか。 世界の中心は何処ですか? (それはきっと生きる事そのもの) 141220 |