世界の中心は何処ですか?






「おはよージョナー」

「おはよう、アルバ」

むあ、と欠伸しながら挨拶しても、ジョナはにこやかに挨拶してくれた。やっぱりジョナってば良く出来た人だよなあ。見習えって?ちょっと無理かな!
朝ご飯をもらって、ぐっと大きく伸びをした。さあ、今日はやることがたくさんある、さっさと行動しなきゃあね。

「ねえジョナ、今日俺出かけていい?」

「いいけど、どうかしたのかい?」

「みんなに挨拶してくるよ!流石に、俺もそろそろ戻らなきゃだしねえ」

笑ってそういえば、ジョナはそうだね、と少し寂しそうに笑った。俺がいたってうるさいだけだと思うんだけどねー。自覚あるなら直せって?面倒だから却下。
じゃあ行ってきます!と声をかけて、外に出た。雲一つない快晴、うん、今日もいい天気だ!





「あっ見つけた!おーいネエロー!兄貴ィー!!」

「……アルバか。朝から元気だな」

「朝っぱらからうるせーぞ」

わあ、二人とも超不機嫌顔!ネエロはどちらかってーと疲れてるみたいだけど。御愁傷様です。
走って二人に近付いて、そろそろ帰るから挨拶しに来たよ、と伝える。

「おーそうかい。静かになって助かるぜ」

「兄貴ってば辛辣!!でもまあ、一理あるかも……うん」

「認めるのか否定するのかどちらかにしたらどうだ」

「ええー?いいじゃんグレーゾーンってやつだよ!セウト!」

けたけたと笑ってみせると、ネエロは深く溜息をついた。えっ俺のせい?俺のせいなの?まあいっか。
そう言う事だから!と話を切り上げて、二人に別れの挨拶を。何かあったら呼んでね!格安で引き受けちゃうよ!
そのままフラフラしてたら、テーブルがある場所……えーと、カフェだっけ?に、変なの付けてるオニーサンと、その前に飲み物を置くサラダさんが居た。やったねナイスタイミング!

「オニーサンとサラダさんやっほー。そろそろ帰るから挨拶しに来たんだけど、……仕事中?」

「俺をサラダさんと呼ぶな!仕事というよりは手伝いだ」

「あらそー。なんか様になってるねえ」

そう言ったら、サラダさんは何も出さないからなと言い切った。いや別に、俺何か欲しいとか言ってないんだけど、俺そんなに何か欲しがってるように見えるの?どういうことなの馬鹿なの死ぬの?
軽く否定してから、オニーサンのほうに向き直る。

「お前に帰る場所があるのか」

「何それ酷い。一応あるんだからね!」

「へえ」

アッすごく興味なさそう。じゃあ何で聞いたのよ。てかオニーサン俺の方見すらしないんだけど。ずっと何か書いてる。いや、字っぽくないし描いてるのかな?
もういいや、次行こう……と思って後ろ向いたら、何かがぽすんと当たった。

「何さオニーサン」

「やるよ」

「……これ、俺?へえ、すごい!オニーサン上手だね!」

オニーサンがくれたのは一枚の紙で、それには俺が武器を構えている姿が書かれていた。すっごく上手!特徴めっちゃ捉えてると思う!でも欲を言えば、俺じゃあ無くてモンスター描いてほしかったなあ。出来ればジンオウガ。いや、オニーサン多分ジンオウガ知らないだろうけど。
ありがとう、またねー!と挨拶して、サラダさんとオニーサンに背を向けた。

次に向かったのは海。確か、カキョインと姉御に会ったのそこだったもんね!……かと思ってたら、向かう途中でカキョインにばったり遭遇。俺を見つけると、穏やかに微笑んで、やあ、と挨拶してくれた。

「やっほーカキョイン!今日は一人?」

「うん、ちょっと買い物に。アルバはどうしたんだい?」

「そろそろ戻るから、挨拶しとかなきゃと思って」

そのままの言葉を伝えたら、カキョインはそっか、と眉を下げて笑った。あ、なんか一番お別れって感じするね。え?俺だけ?サーセンっした。
またね、と手を振ったら、カキョインは俺の名前を呼ぶ。エッなに、何かおかしかった?

「アルバは、あんな風に命を狙われても戻るのかい?」

「戻るよ。俺が生きる場所はあそこにしかない。俺は狩り場に生きて狩り場に死ぬ。戻る以外の選択肢がないんだよ」

「……そっか、なら仕方ないね」

カキョインはやっぱり眉を下げて、諦めたように笑った。心配してくれて嬉しいし、なにより、俺の世界観を否定しないのがありがたかった。あの連中は、聞きもせずに否定から入ってたから。別にいいけど。
湿っぽいのは好きじゃないし、じゃあね、と軽く言ってカキョインと別れる。本当は全員に挨拶するべきなんだろうけど、もうそろそろ、時間だ。

ジョナ達の家に戻って、荷物を背負う。大したものを持ってるわけじゃあないし、忘れ物をしても、大した問題にはならないだろう。いや、それを処分するって意味では問題かもしれないけど。主にジョナ達が。
ポーチの中身を確認して、それから、笠の紐をしっかり縛る。さあ、戻ろう。俺の世界に。俺が(ハンター)として生きられる場所に。


「アルバ」


ドアを開けるその瞬間、背後から声をかけられた。振り向かなくたって分かる、ジョナだ。なあにー、と間延びした声で答えると、そのまま、ジョナは言葉を紡ぐ。


「―――今度は、遊びにきておくれよ」

「はは、物好きめ!ありがと、うん、暇が出来たら。……それじゃ、俺、行くよ。みんなにヨロシクね、ジョナサン・ジョースター」


返事があったのか、なかったのか、俺には分からない。無機質に閉まった扉は、あったであろう声をかき消した。それでいい。後腐れ無くて、結構なことじゃあないか。
笠越しに空を仰ぐ。まだ日は高く、蒼穹はどこまでも遠かった。何処に行っても変わらないものなのだ。雄大で過酷な自然というのは、そういうヤツなのだ。
ひっそりと笑って、足を進めた。さあ、一狩り行きますか。





世界の中心は何処ですか?
(それはきっと生きる事そのもの)



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