錯覚世界の真贋(全)※狂・流血 「ああ、やっときた。待ちくたびれちゃったよ」 そう言って女は。 玲は綺麗に、笑みを浮かべる。 安土城。 魔王との最終決戦がやっと終わった、なのに悲鳴はやまねえ。 玲は血塗れの身体を片腕で抱くように、一方は怪しく光る両刃の短刀を手に立ち尽くしていた。 俺と幸村の前には、黄色と紫。 ―――風来坊と、西海の鬼。 「ねえ教えて?なんで信長様を殺したの?」 「なに言ってやがる!恐怖と絶望の支配なんざ、何も残らねえ!」 叫んだ。 玲は笑う。笑ったまま。 その表情が、寂しそうに歪む。 「みんなそういうの。酷い…信長様は同じように天下を夢見ただけなのに」 「玲殿、何を…!」 「やめろ、幸村」 風来坊が、低い声で戒めた。 西海の鬼が悲痛に、そして憎々しげに吐き捨てる。 「玲はもう正気じゃねえ」 表情は読めねえ。 けど、風来坊も西海の鬼も、武器を構えて臨戦体制ってのはわかった。 玲は、わらう。 「私は正気だよ?なのにみんなそういうの、武器向けてさ」 どくり、心の臓がいやな音で感情を主張する。 ちがう、言うな。 「だから解放してあげたの」 「佐助も小十郎も、元就もまつさんも利さんも」 思 考 が、 凍 っ た 。 身体の痛みも忘れて、西海の鬼の横に並んだ。 見るな、と言われたが、もう遅かった。 折れた薙刀。仰向けの細い、華奢な身体。 それに精一杯手を伸ばしたであろう、両腕の肘から先のない傷だらけな肢体。 輪刀が腹部に刺さった、俯せの若草色。 その手には、彼のモノであろう、柘榴のように赤く血に熟れた眼球。 喉を裂き刔られて、そしてそこ一点で木に磔けられている、迷彩柄。 それと――― 両の目を潰され、決意を叩き折られ、事もあろうにその刃で額を割られている、 どす黒く染まった、見慣れた茶色の陣羽織。 「こじゅ…う、ろ…」 「………さすけ、」 「…利も、まつねえちゃんも、」 「………元就も、全員、」 「解放してあげたの」 やたら明るい、無邪気な声が繰り返した。 玲は、嗤ウ。 「…解放?……ふざけんじゃねえっ!!」 「ふざけてないよ?」 高らかに、歌うように。 綺麗に崩壊した感情が、流れる。 「食べ物にも水にも空気にも依存しなきゃ生きていけない、それが自由?」 「平和は自由なの?天下は解放なの?」 「なんで信長様の天下布武はダメで、あなたたちの天下取りはいいの?」 …Crazyすぎて、絶句するしかない。 玲は、嗤う。 この血塗れの場所に似合わない、無邪気な、あどけない笑顔で。 「世界はね、みーんなそれぞれが中心なんだよ? 他人の世界を侵略して、それで初めて存在するの。 世界の価値観なんて、その世界それぞれ。 だからみんなの世界、否定はしないよ? …でもね、」 微かな鍔鳴りが聞こえた。 全員が武器を構える。 「自分の世界壊されて、黙ってなんかいられないの」 赤色が、舞う。 何も見えねえ、ただ、左目が焼けそうなくらい熱く、そして痛かった。 「 」 出したはずの声は、俺にさえ聞き取れず、 錯覚世界の真贋 (胸部に埋め込まれた六文銭) (碇で縫い付けられた身体) (四肢を刻まれ傾いた首) (飛翔の術を失った竜) (それらに囲まれた女は嗤ウ) --------------------------------- すいません…!← たまにこういうのは書きたくなりますすいません本当に!← 意味不ですねorz 一応死に様はみんな理由があります← 091103 |